やましろのくに 山背<やましろ>の国のよいこと・よいもの・よいところ…
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No.112 菜の花と桜



 三山木駅から西へ約2km、観音寺という古刹があります。道路沿い普賢寺川からお寺までは菜の花畠、参道の並木や庭の桜と共に贅沢な春の風景です。菜の花はれんげの花と共に日本の春の田園に広がる農の姿でした。景観は、そこに生きた人々の暮らしの総和と言われます。開発・経済活性化のかけ声に煽られ急速に変化したこれまでの暮らしは、原発に行きつき、遂に破綻しました。
 昔「国破れて山河あり…」と習いましたが、いま原発破れても山河も海も奪われています。もうひとつ日本は「豊葦原の瑞穂の国…」とも言いましたが、いまは、食を他国に依存し生きることの基盤を外国の市場に明け渡し、生殺与奪の権を握らせてもよしというのです。
 菜の花畠はそんなことをも思い起こさせます。逞しさを秘めた小さい花が幼いが故に、その美しい風景が少ないが故に大切に育てたいと思いました。観音寺にはとても美しい観音菩薩像が菜の花と桜をみつめていました。
 
(切り絵と文・川越 義夫)
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