山背<やましろ>の国のよいこと・よいもの・よいところ… 切り絵とエッセイで紹介します |
No.44 岩船寺あたりの石仏(加茂町) |
雑木林が空と溶けあうあたり、風がうたうように流れます。野のあちこちにおわす石仏。笑みを浮かペはるかな空と語り合っている様子は、訪れるものの心をとらえます。自分もかたわらに座ってみたいと思います。そうすれば、風のうた、草花の言葉がきこえるに違いない―そう思うのです。 岩船寺、浄瑠璃寺と、人々は野の道を辿りますが、あちこちに里の幸が無人の店におかれてあります。お金を入れる箱がそばにあって時おり小さな音をたてます。野の香りいっぱいのきのこ、干柿、漬物…。素朴な味わいが心をゆたかにしてくれます。 木材の和束、陶器の信楽、そして舟運の木津とはるかに目を移していけば、その昔、東大寺や興福寺などの荘園であった時代がなんとなく姿をあらわすように思えて、しばらく時を忘れてしまいます。 (切り絵と文 川越 義夫) 作者プロフィール |