やましろのくに 山背<やましろ>の国のよいこと・よいもの・よいところ…
切り絵とエッセイで紹介します
一覧へ

No.50 宇治田原町湯屋谷のホタル(綴喜郡)




 少し前はどこにでもいたホタルに会うことが、昨今なんと難しくなったことでしょう。
 宇治田原町、湯屋谷。昔はこの谷全体にホタルが飛び交っていたようです。しかし現在は、ここさえもホタルにとって楽園ではなくなったようです。
 谷に沿って走る道に夜通し輝く水銀灯。「あれがついているところではあかんで」と、土地の人。川に沿って歩きながらあちこちで「昔は多かったけど…」の声をききます。
 今、日本の川は、例外なく岸がコンクリートで固められ、さらにかなりの所で川底まで流し固められています。
 しかしそれでも、砂がたまっているようなところでは、芦が育っています。そんな場所を見つけ、夜を待ちました。想像はあたっていて、八時前になると青い美しい光がいくつも舞いはじめました。闇と対していると、闇がいくつもの小さな命を育んでいる気配が察せられます。コンクリートとアスファルトで固められ寸断された日本の山川への思いが、目をいっそう冴えさせました。。


(切り絵と文 川越義夫)
作者プロフィール



home