京都南法律事務所

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関わった事件

自治体労働者の権利問題 [出版物の紹介]

弁護士 中尾 誠
この問題との関わり
 京都府南部の宇治市・城陽市の自治体労働者の組合の事件を受任したことをきっかけとして、自治体労働者・労働組合からの相談をよく受けるようになった。また、この間、自治労連本部の事務局弁護団の一員として活動していることから、全国各地で起こっている事例についても関与するようになると共に、自治体に関する制度的な問題についても首を突っ込むことになった。
 何か新しい法律が成立すると、自治体ないし自治体労働者にその法律の適用があるかどうかとか、あるとしてどの程度活用が可能かということを考えるということが身についてしまったように思う。
 出版物(主には自治労連弁護団の一員として集団で論議し、分担をして執筆したもの)の紹介をして、それとの関連で、いくつかの問題について考えていること(ないし、当時考えていたこと)を述べる。
自治体労働者の権利Q&A(増補改訂版)
 これ一冊で、自治体労働者・労働組合の権利に関してはわかるということをコンセプトにして、各地で実際に起こった事案をベースにして網羅的に項目を立ててQ&A形式で解説したものである。特に、自治体に多くいる臨時・非常勤職員の権利については、厚い記載となっている。
 自治体労働者は民間労働者とは異なり、労基法・労組法の適用がないということがよく言われる。しかし、それは半分正しいが半分間違っている。この本は、「自治体労働者と労働関係法について」(P17~)という形で法律の適用関係の区分をした上で、自治体労働者についても、できるだけ民間労働者の権利と同じように扱うべきであるという視点で書かれている。
 自治体労働者の権利は、民間労働者と国公労働者との間に位置するもので、よい時は両方のいい所どりができるが、今の厳しい情勢の下では、両方の悪い所ばかりが押しつけられるということになり、注意を要する。
消防職員ハンドブック(改訂版)
 消防職員には臨時・非常勤職員はおらず、すべて正規職員であるという意味で、一番地方公務員らしい地方公務員であるといえる。そして、24時間、365日中、誰かが働いていなければならず、勤務形態は変形労働時間制である。また、世界的にみて珍しいことであるが、団結権が否定されている。
 このような立場にある消防職員の権利問題と合わせて、そもそも消防とは何か、消防力の基準とはなどを含めて解説をしたものであり、類書はないと自負している。
 消防職員の自主的組織である「消防職員ネットワーク」が1997年に結成されたが、その会の活動・拡大に資することができればということがこの本の出版のきっかけである。
 国民保護法制が具体化する中、良くも悪くも、消防組織の役割が重視されるようになり、消防職員の権利の確立は重要になってくると思う。
自治体情報公開のすすめ
 私が執筆したのは、「公務員労働者・労働条件と情報公開」部分である。
 この本が出された当時、各地の自治体でオンブズマンによる情報公開条例に基づく情報公開請求が盛んに行われていた。自治体の保有する情報の中には、自治体労働者の個人情報とか自治体当局と労働組合との労使関係に関する情報もある。組合の立場から見て、それらの情報もすべて住民に公開されるのが妥当なのかということが問題となった。
 労使関係に関する情報は原則公開であり第三者の批判は受忍すべきである、また、自治体労働者の個人情報は職務遂行との関連性が薄いものは、プライバシー保護の対象であり非公開であるという論立てをした。その結論については、異論もあり、意見の分かれる問題であった。
改訂版 Q&A 自治体アウトソーシング
 自治体の業務を「金儲けのための市場」とする財界の働きかけのもと、指定管理者制度・地方独立行政法人・PFI・構造改革特区など、矢継ぎ早に、自治体の業務を外部化(アウトソーシング)するツール(道具)が出てきた。それらのツールをトータルとして、自治体労働者や住民の立場から検討・批判したのが、この本である。
 今、民間による刑務所の運営や、公務の一部門をまるごと民間が行うという「市場化テスト」の動きなどが具体化しつつある。自治体とは何をすべき所か、公務とは何かということを原点に立ち戻って考えることが必要となっている。
自治体労働者の権利問題関連のHP
 この問題に興味のある方は、覗いてみてください。きっと、面白い、役に立つ者もあると思います。
日本自治体労働組合総連合
いわゆる自治労連本部です。今旬の問題についても、フォローしているサイトです。その中には「紹介→弁護団意見書」で、この間の弁護団の意見書があります。この間の憲法、有事法制などについても、自治体労働者に特化した意見書となっています。
京都自治体労働組合総連合
京都の自治体労働組合の元締めです。京都の自治体労働者のことならまずはこのサイトへ。
(2006年1月)

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