京都南法律事務所 気になる話題から

気になる話題から
 話題になっているちょっと気になる法律関係の話を取り上げています。

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2021年7月2日
拙速審議と「無反応国会」の閉幕
 菅政権初の204回通常国会が2021年6月16日に閉会しました。
 今国会で成立したデジタル関連6法は、国家による国民監視の危険性があり、プライバシー権や自治体共同クラウドによる住民要求の切り捨て、個人情報の営利的利用に対する懸念が指摘されています。また、成立した土地取引規正法は、政府が自衛隊・米軍基地、原子力発電所などの周辺地域の土地を調査して住民に土地利用に関する勧告をし、政府による土地の買い取り等を定めたもので、戦前の要塞地帯法を彷彿させる内容です。憲法改正国民投票法も改正されましたが、改正運動の際のマスコミ規制などは先送りされました。これらの法案には人権や民主主義にかかわる重要な論点があるにもかかわらず、拙速審理で成立させられました。
 他方、新型コロナウイルスや東京オリンピック・パラリンピック開催問題では、菅首相はひたすら「国民の命と健康を守っていく」と繰り返しただけで、「政治とカネ」の問題も疑惑解明のないまま国会は閉会しました。今国会は「無反応国会」などと呼ばれています。
 日本国憲法は、国会を国権の最高機関と規定し(第41条)、内閣総理大臣とその他の国務大臣は、議案について発言するために議院へ出席することができ、答弁または説明のために求められたときは出席しなければならない(第63条)と定めています。今国会の拙速審議は国権の最高機関としての役割を自ら放棄するものであり、菅首相の対応は答弁と説明の義務を尽くしたとは評価できません。
 国会や内閣のあり方を是正するには、国民の意思が重要ですが、国民世論を正しく反映しない小選挙区制という選挙制度にも「無反応国会」を許す一因があると思われます。
(弁護士 杉山 潔志)
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2021年6月3日
フリーランス ・ ギグワーカー
*王将の店頭で
 先日、家の近くの王将で餃子が出来上がるのを待っていた20分位の間に、ウーバーイーツの人が2人、出前館の人が2人、商品を取りに来ていました。みんな若い男性でした。
 「フリーランス」とか「ギグワーカー」という言葉をこの頃よく見かけます。フリーランスは、「実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者」を、キグワーカーは、「インターネットを通じて短期・単発の仕事を請け負い、個人で働く者」を指すとされています(フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン・令和3年3月26日・内閣官房他)。
 インターネット・スマホ時代の新しい「働き方」と言えるかもしれません。

*働く人たちの地位
 先の定義が正しいとすれば、フリーランス・ギグワーカーの人達は、労働者ではないことになります。配達途中で交通事故に遭った場合も、労働災害の補償はありません。また、最低賃金の保障もありませんので、最低賃金以下の報酬の取り決めをすることも可能です。
 そのような中、昨年10月にウーバーイーツの配達員(17名)が、労働組合を結成したという新聞記事を見かけました。会社(ウーバージャパン)は、配達員の地位を「個人事業主」と考えているので、今後の行方が注目されます。
 ウーバー社については、世界各地で、配達員(ドライバー)が労働者かどうかが問題となっており、イギリスでは2021年2月に、フランスでは同年3月に、それぞれ最高裁で労働者と認める判決が出されています。
 労働法は、工場で働く労働者が中心となって戦い、獲得をしてきたことによって形成されていったものです。
 今、目の前にいるフリーランス・ギグワーカーの人達の働きかたは、工場のそれとは異なっていることも事実です。新しい取り組みが求められているのかもしれません。
(弁護士 中尾 誠)
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2021年5月8日
情報技術の進歩と民主主義 〜広く物事を見つめる姿勢を忘れずに
 初めての緊急事態宣言から1年以上が経過しましたが、未だに新型コロナウイルスの話題が多く感じます。実際、多くの方が新型コロナウイルスに関するニュースに関心を寄せていますし、それも無理からぬところです。しかし、新型コロナウイルスだけが、世界のすべてではありません。
 例えば、東南アジアの国、ミャンマーで軍部がクーデターにより政権を掌握してから、2か月余りが経過しました。ついに民主的な政治を求める市民に対して発砲し、市民が射殺されるという事態にまで至りました。現在では、国内外のミャンマー国民が立ち上がり、インターネットを通じた情報の拡散やデモ活動により、国際社会の支援を求めています。一連の動きは、軍という実力組織に対する民主主義の脆弱性を示す一方で、情報技術の進歩による民主主義の可能性も示しています。いずれも民主主義の根幹にかかわる問題です。しかし、国内における関心はそれほど高まっているように感じません。これはやはり、新型コロナウイルスの流行によって、遠い国の状況に関心を払うことが難しくなっていることも原因の一つでしょう。今回のクーデターの背景には、新型コロナウイルスの影響で国際社会の関心が薄れたことも指摘されています。
 人間が一度に処理・記憶できる情報の量には限界があります。情報技術の進歩により、入手できる情報の速度と量は飛躍的に進歩しました。その速度と量に人間の能力が追い付いていませんし、今後追いつくこともないでしょう。最近では、無限に開かれたはずのインターネットの世界で、極めて限定的なコミュニティを形成し、自分にとって都合の良い情報だけを摂取する傾向があることが指摘されています。余暇時間まであえて不愉快な情報に触れたいと思う人は少ないでしょうし、興味のある事柄に限定して関心を向けることは至極当然のことでしょう。一方でそのような姿勢の先に、望まぬ結果を招くことは歴史に学ぶことができます。情報にあふれた今日であればこそ、開かれた視点で、広く物事を見つめる姿勢を忘れないようにしたいものです。
(弁護士 石井 達也)
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2021年4月8日
いろいろな 「残業手当」 について
 一日8時間、週40時間を超えて働いた場合、労基法37条は、残業時間には25%の割り増し賃金を加算しなければならないと定めています(残業代)。
 残業代の支払に代えて、「残業手当」等が支払われている会社もありますが、上記で計算した残業代の方が多くなる場合は、差額分の支払いが必要です。
 令和2年3月30日最高裁判決(国際自動車事件)は、あるタクシー会社が、残業代を「残業手当」として支払いながら、歩合給額を決めるのに「残業手当」と同じ額を差し引いていたケースについて、残業代を払ったことにならないとしました。そして、「残業手当」等が支払われている場合の適法性を以下のような方法で判断すべきだとしました。

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 「残業手当」等、残業代の支払い方は労働基準法で定める額を下回らない限り自由に決めてよいが、残業代の支払があったと言えるためには、通常の労働時間の賃金を基礎に計算した金額を下回って はならない、その判断には、
①通常の労働時間の賃金にあたる部分と残業代にあたる賃金部分を判別できなければならず、②「残業手当」が時間外労働等に対する対価として支払われたものと言えなければならない、これらを労働基準法37条が残業代の支払いを定めた趣旨(①労働時間規制を守らせること、②労働者への補償)や「残業手当」の賃金体系における位置づけに留意して検討することが必要だ。
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 いろいろな「残業手当」がありますが、残業代支払いを免れるために使われてはなりません。
(弁護士 井関 佳法)
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2021年3月6日
暴力団排除条項と誓約書
*京都府暴力団排除条例
 この条例の目的は,暴力団の存在及び暴力団員による不当な行為により,府の行政,府内の事業活動,府民生活に生じる不当な影響を排除することです。
 第17条は,事業者に対し,①暴力団員等を契約の相手方としないこと ②契約の相手方が暴力団員等と判明した場合は,催告なしに契約を解除できるようにすること ③取引の相手方や取引の媒介者などに暴力団員等でないことを確認し,それを書面で誓約させるなどの措置をとることを努力義務としています。暴排条例は全国で制定され,最近の不動産売買契約書や不動産賃貸借契約書には,暴力団排除条項が入っているのが通例です。

*暴力団員とゴルフ,預金口座の開設行為
 暴力団員の身分を隠してゴルフをした行為が詐欺罪に当たるかについて、平成26年3月28日に2つの最高裁判決等が出ました。宮崎県のゴルフ場事件は1審,2審は有罪でしたが,最高裁は無罪,長野県のゴルフ場事件は1審無罪,2審有罪,最高裁は上告棄却で有罪でした。最高裁は,宮崎県のゴルフ場は「利用約款や立看板で暴力団関係者の利用を拒絶していたが,それ以上に確認する措置がなかった」と指摘し,これに対し,長野県のゴルフ場は会員に「暴力団関係者は同伴しない」等の誓約書を提出させていた点が重視されました。
 また,暴力団員であることを隠しての口座開設について,最高裁は平成26年4月7日決定で,当該銀行の規定及び申込書に「私は反社会的勢力ではないことを表明・確約して申込みます」と記載があることを根拠に,詐欺罪に当たるとしました。

*マンション管理規約への暴排条項の導入
 暴力団抗争事件は,組事務所だけで発生するのではなく,組員個人の自宅周辺でも発生しています。そのため,管理規約に暴排条項を導入するマンションが増加しています。近時,警察は,暴力団員等であることを隠して入居した場合,積極的に詐欺罪で摘発しています。そのためには,管理規約と「誓約書」の存在が重要なのです。
(弁護士 吉田 眞佐子)
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2021年2月12日
バイデン新政権のスタート
 アメリカ大統領選挙は、民主党・バイデン元副大統領が現職の共和党・トランプ大統領に競り勝って勝利し、2021年1月20日、バイデン新政権がスタートしました。
 バイデン大統領は、国際関係において、トランプの裏返しよろしく「米国第一主義」から「国際協調主義」へと政策転換を打ち出しています。地球環境問題、核兵器禁止条約が発効したもとでの核軍縮、米中関係、新型コロナウイルス感染症のパンデミックなどの分野でのリーダーシップが注目されます。
 また、バイデン大統領は、政権のポストを中道的な人で固めましたが、国防長官に黒人を、国土安全保障長官にヒスパニックを、内務長官には先住民を、財務長官や国家情報長官に女性を登用して人事の多様性をアピールしました。
 その中でも、アフリカ系・インド系のカマラ・ハリス上院議員を副大統領に選んだことが注目されます。ハリス氏は、バイデン氏と民主党予備選挙を争い、人種隔離政策をなくすためのバス通学に批判的態度をとったバイデン氏を厳しく批判し、しどろもどろにさせました。しかし、バイデン氏は批判者であるハリス氏を副大統領候補に選び大統領選挙をたたかったのです。
 翻って、日本では、昨年9月に登場した菅首相は、就任早々、日本学術会議法の規定を無視して日本学術会議が推薦した科学者のうち6人を任命しませんでした。菅首相は任命しない理由を明らかにしませんが、これら6名は安全保障法制の改定や共謀罪法案提出の際に安倍政権に批判的な態度をとった科学者でした。
 バイデン新政権の誕生に際し、アメリカと日本の政権批判者に対する対応の差異が際立ちました。日本の政治に法治主義と多様性を実現する必要性を痛感させられました。
(弁護士 杉山 潔志)
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2021年1月17日
終活・遺言
 「終活」、「エンディングノート」という言葉を見かけるようになったのは、この10年位のことだと思います。
 終活の最初は、年賀状を出さないことかもしれません。介護が必要となった時、誰にどのように介護してもらうかを決めておくことは、最も必要なことです。しかし、それは、相手(介護をする人)がいることですので、自分一人で決めることは出来ません。
 亡くなった後のこと(葬儀はどのような形でするか、遺品整理は、預金の目録は…)についても、エンディングノートを書いておいた方が良いと言われています。しかし、葬儀は故人のためであると同時に、残された人のためでもあります。遺品は相続され、相続人の物となります。また、その時には、本人はもうこの世にいませんので、どうしようもないことでもあります。よって、後は「残された人」の判断に任せるというのも、一つの選択肢だと思います。
 また、「争族」を避けるために、遺言を書いておく方が良いと言われることがあります。昨年7月から、法務局に遺言書を預ける「遺言書保管制度」もスタートしました。
 確かに、遺言書を書いておいた方が良い場合のあることは事実です。例えば、在日韓国・朝鮮人の方(戸籍の取り寄せなどが難しい)、隠し子がいる場合(特に本人以外の人がその存在を知らない場合)、子供がおらず亡くなった時、子供のうちの1人に家業を継がせる場合(相続財産を分割すれば家業が成り立たない)、相続人以外の人に財産をあげたい場合、等々です。
 しかし、遺言書を書くことによって、かえって、相続人間で争いが生じる例もあるのも事実です。ある意味、遺言書を書くこと(書かないこと)は、その人の最大の「終活」かもしれません。
 何か気になることがあれば、お気軽にご相談ください。
(弁護士 中尾 誠)
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2020年12月10日
非正規の格差是正を求める裁判に対して、最高裁で判決が続いて出されました
◆2020年10月13日の判決は、賞与と退職金について、非正規社員への不支給を容認しました。当該会社の賞与や退職金には有能な人材定着を図る目的があり、正社員にだけ支給しても不合理ではないとしました。

◆2020年10月15日の判決は、扶養手当・年末年始勤務手当・夏期冬期休暇・有給の病気休暇・祝日給について、非正規の格差是正を命じました。原告らは、継続的に勤務を続けてきた労働者であり、これら手当や制度の性質や目的は原告らにも妥当するとして、格差は不合理だと判断しました。

◆いずれの判決も、その制度の性格や目的に照らして、異なる扱いをすることに合理性を認めることができるか、という考え方で判断されています。
 この点、賞与と退職金の制度目的は人材定着目的だけなのか疑問があり、13日判決には、格差是正に背を向けたものとして批判が必要でしょう。
 ただ、13日判決も賞与や退職金の不支給一般を容認したものではありません。賞与や退職金の不支給が不合理となる場合があるとも明言しています。最高裁の考え方によっても、賞与や退職金について格差是正を命じる判決が出る余地があります。
 さらに、法律が改正され、厚労省から「同一賃金同一労働ガイドライン」が出されており、2020年4月(中小企業は2021年4月)から施行されています。そこでは、例えば賞与について「会社への貢献の違いに応じて(非正規にも)支給しなければならない」と定められているなど、使える内容も盛り込まれています。
 非正規の格差是正は、今、全力で取り組まなければならない重要な課題です。是非、ご相談ください。
(弁護士 井関 佳法)
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2020年11月13日
マイナンバーカードが健康保険証? それって大丈夫?
*2021年3月から利用開始予定ですが,従来の健康保険証でも受診できます
 政府は,2021年3月から,医療機関・薬局などでマイナンバーカードを健康保険証として利用することが可能となるよう準備を進めています。マイナポータルでは,①特定健診情報の閲覧が順次可能となり,2021年10月からは,②薬剤情報・③医療費情報の閲覧が可能となり,本人の同意があれば医師等が①②を共有することができるようになる予定です。

*マイナンバーとは
 行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号であり,原則として一生涯変わりません。目的は「行政効率化,国民利便性向上,公平公正社会」とされ,個人を生涯追跡でき,複数の機関(行政・民間)において同一人の紐付けが可能となり,2016年1月から社会保障,税務,災害対策の分野で利用されています。マイナンバーカードの有効期間は,成人10年(電子証明書5年),未成年者5年です。

*マイナンバーカードを健康保険証として利用する前に
 利用前に,マイナポータルというアプリをダウンロードして登録申請をするなどの手続きが必要です。医療機関は,カードを読み取る「カードリーダー」の導入が必要であり,システム導入の義務はないので,全ての医療機関で利用できるわけではありません。
 医療情報はプライバシー性の高い情報です。過去から現在治療中の傷病,死後まで紐付け可能となり,情報漏洩,目的外使用などが心配されます。
 マイナポータルは,1人1つの個人サイト,行政の保有するマイナンバー付きの個人情報が閲覧可能です。カード番号と暗証番号が分かれば,他人が見ることも可能です。
 銀行口座から知らぬ間に不正出金されるなど,サイバー攻撃や盗難・紛失による個人情報の漏洩,なりすましの被害が各方面で相次いでいます。共通番号制度は見直しが必要との意見も根強いです。本件は,利用申込みをする前に,よく検討することが必要と思います。
(弁護士 吉田 眞佐子)
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2020年10月7日
菅新内閣総理大臣の 「自助・共助・公助」
 安倍首相の辞任表明に伴って、9月14日、自民党で総裁選挙が行われ、官房長官として安倍政権を支えてきた菅義偉氏が選出され、9月16日、衆参両院の本会議で第99代首相に選出されました。菅新首相は、当日記者会見を行い、アベノミクスなど安倍政権を承継することを表明し、「私が目指す社会像、それは、自助、共助、公助、そして絆であります。」と述べました。
 「自助・公助・共助」は、社会保障制度改革国民会議が2013年8月に公表した報告書で強調されたキーワードです。国民の生活は、自らが働いて自らの生活を支え、自らの健康は自ら維持するという「自助」が基本であるとされました。安倍政権は、この報告を踏まえた政策をすすめ、生活保護や年金給付の引き下げ、国民の医療費負担の増大、医療機関の診療報酬の削減、介護保険料の増大と介護サービスからの国の撤退などの政府の社会保障給付を押さえて「公助」を後退させました。
 アベノミクスにより大企業や一部の富裕層がさらに富裕化する一方で、非正規労働者の増大や高齢化社会の進行の中で格差社会が進展し、自らの生活や健康を「自助」しようとしてもできない国民が増大しました。このような人々を「自己責任」のもとに切り捨て、取り巻きを優遇し、防衛費を増大させてきたのが安倍政権でした。
 菅氏が秋田県の雪深い農村出身の苦労人というイメージが先行してか、菅新政権は高い支持率を得ているようです。国民の支持を失った安倍政権を承継するという新政権に目新しい政策はみられません。新政権が更なる社会保障の切り捨てや憲法改悪に動き出さないよう国民の監視と行動が必要です。

(弁護士 杉山 潔志)
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2020年9月9日
新型コロナウイルスと法律
【出入国管理及び難民認定法】
 現在、ほとんどの外国人の入国を規制しています。これは、出入国管理及び難民認定法5条の「法務大臣において日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者(外国人)」は、「本邦に上陸することができない」との規定に基づいています。
 他の国も同様に、規定に基づいて「外国人」の入国を規制していますが、これは、自国民の安全・健康は、まず、その国が守るという考えに基づいているものです。しかし、「鎖国」が及ぼす影響は、いろいろな形で出始めています。

【新型インフルエンザ等対策特別措置法】
 元々、新型インフルエンザの大流行(パンデミック)を想定して作られていた法律でしたが、急遽、「新型コロナウイルス感染症について、新型インフルエンザ等とみなして、この法律及びこの法律に基づく命令の規定を適用する」としました。誰にとっても、今回の事態は、想定外のことだったようです。
 政府対策本部長(安倍首相)が何度か発した緊急事態宣言は、この法律(32条)によるもので、実際の自粛要請や施設の使用制限の要請など「感染を防止するための協力要請」は、指定された都道県知事によって行われています(同法45条)。よって、都道府県独自の「緊急事態宣言」は、この法律に根拠を持たないものです。

【感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律】
 今回の事態の中、新型コロナウイルス感染症について、政令で「指定感染症」に指定されました。
 この法律は、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関し必要な措置を定め」たもので(1条)、必要な措置をする主体は、都道府県(ないし、保健所を設置する市又は特別区・64条)であり、保健所がその最前線の機関となります。
 しかし、この間、保健所の数は大きく減少しており、合理化のつけが出ているように思います。

(弁護士 中尾  誠)
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2020年8月7日
最低賃金の引き上げを!
【最賃引き上げ無用の答申】
 7月22日、厚労省の中央最低賃金審議会は2020年度の最低賃金を引き上げないことが適当と答申しました。コロナを理由に抑制姿勢を露わにしていた安倍政権の意向に沿ったものです。

【最賃法】
 最低賃金法は、賃金の最低額を保証しており雇用形態や国籍にかかわらず働く全ての人が対象で、違反した使用者は罰金50万円以下で処罰されることとなっており、最賃以下が合意されても無効となり、最賃との差額の支払い義務があります。憲法25条の生存権を根拠に契約自由の原則を修正しているのです。

【低すぎる最賃水準】
 しかし、日本の最賃水準は、現在、東京で時給1,013円、京都で909円とされていますが(2019年度)、生活を維持するのに必要な生活費(最低生計費)を稼ぐのに、東京では時給1,664円、京都で1,639円が必要で(全労連調査)、最賃はこれらを大きく下回っています。生活できる賃金水準となっておらず、生存権が保障されているとは言えません。
 OECD(経済協力開発機構)統計データによると、EU諸国や韓国の最賃水準は、フルタイム労働者の賃金中央値の5〜6割ですが、日本の最賃は4割に過ぎません。国連も日本の最賃水準の低さに懸念を示しています。

【個人消費の回復こそ】
 景気気回復には、最賃を引き上げ、個人消費を回復させることが必要です。もちろん、中小企業に対する賃上げ支援とセットで行うべきで、そのための財源は大企業の450兆円にも及ぶ内部留保の活用が検討されるべきでしょう。

【コロナ禍の下で】
 コロナ禍で、医療・福祉・小売・飲食・サービス等社会を支える必要不可欠な仕事(エッセンシャルワーク)が注目されていますが、おしなべて低賃金となっています。最賃引き上げは、エッセンシャルワークを直接支援する、コロナ対策としても重要です。

【京都で声を大きく】
 最賃は、地域ごとに定められており、これから、京都府審議会で議論され京都の最賃が決められます。京都でも最賃引き上げの声を大きくしていきましょう。地域格差を解消するため、全国一律最賃制を求めてゆきましょう。
(弁護士 井関佳法)
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2020年7月10日
2020年6月からパワハラ防止対策が強化されました!
  ~労災認定基準にも新項目として追加

【 職場におけるパワーハラスメント防止措置の義務化 】
 改正労働施策総合推進法が2020年6月1日に施行され、パワハラ防止措置が事業主の義務となりました。中小事業主の義務化は2022年4月1日からであり、それまでは努力義務ですが、早急な対応が必要です。
 職場におけるパワハラは、労働者に精神的打撃を与え、ストレスとなり、労働環境の悪化や労働生産性低下の原因となります。事業主が適切な対応をしない等の場合は、労働者の退職や精神疾患による休職など重大な結果につながることもあります。パワハラ被害を受けて精神疾患となり休職あるいは退職に追い込まれ、あるいは自死した労働者について労働災害と認定された事件、さらには事業主に対する安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求事件が報道されています。

【 パワーハラスメントとは 】
 同法に規定する職場における「パワハラ」とは、
  ①優越的な関係を背景とした言動であって
  ②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
  ③労働者の就業環境が害されるものとされています。
 ①は必ずしも上司とは限らず、同僚や部下であっても抵抗又は拒絶が困難な関係である場合は含まれます。
 指針では、具体例として、
  ①身体的な攻撃(暴行・傷害)
  ②精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)
  ③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
  ④過大な要求
  ⑤過小な要求
  ⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
 を挙げています。

【 事業主の責務 】
 事業主は、パワハラを禁止する旨の方針を明確化して周知・啓発をすること、行為者に厳正に対処することを就業規則等に明記し周知・啓発すること、相談の窓口・適切対応のための体制を整備すること、ケース発生後は迅速かつ適切な対応をすること等が法律上の義務として求められます。相談したこと、事実を述べたことを理由とする不利益取扱いが法律上禁止されます。
 また、精神障害の労災認定基準に「パワハラ」が新項目として追加されました。
(弁護士 吉田眞佐子)
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2020年6月11日
新型コロナウイルスに対する政府と自治体の施策
 日本全土にわたって猛威を振るっている新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言は、5月14日に解除されていた39県に続き、5月21日、京都府についても解除されましたが、新型コロナウイルスは、引き続き医療や経済、教育、文化など社会の広範な分野に大きな影響を与えています。
 政府は、アベノマスクの配布、事業継続化給付金、特別支給金や雇用調整助成金の給付、特別貸付・危機対応融資、納税猶予などさまざまな施策を実施し、アルバイト収入減の学生を対象とした最大20万円の給付も決定されました。さらに休業者給付金、事業者の家賃・地代支援給付金制度の具体化作業にも着手しました。
 京都府は中小企業・団体に20万円、個人事業主に10万円を支給する休業要請対象事業者支援給付金、テレワーク導入支援などの多様な働き方推進事業補助金などの制度を、京都市は、京都市中小企業等緊急支援補助金、小規模事業者持続化補助金(一般型・コロナ特別対応型)などの制度を創設しています。
 また、市町村などの自治体では、国民健康保険・後期高齢者医療保険・介護保険の保険料の減免・納付猶予、市府民税の減免・徴収猶予、下水道料の納付猶予、保育料・給食費の減免(助成)、子育て世帯への臨時特別給付金、小中学校の就学援助、住居確保給付金などの制度が設けられ、相談活動も実施されています。
 制度やその援助などの内容や援助の要件、その実施期間などは市町村によって異なる部分もあり、世論に押されて新たな制度ができているのが現状です。京都府や市町村のホームページや窓口などで給付や援助の内容をご確認ください。
 事業と生活を護る気概を持ち、制度も活用して新型コロナウイルスの影響から立ち直っていきましょう。

 ※ 当事務所HPにも「新型コロナウイルスに関するくらしに役立つ情報サイトの紹介」を掲載しております。ご利用ください。
(弁護士 杉山潔志)
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2020年5月9日
民法(債権法関係)が施行されます~その④【法定利率に関する改正】
 契約に関する民法の規定(債権法)改正の4回目(最終回)で、今回は法定利率に関する改正についてです。なお、この規定は4月1日からすでに適用となっています。

◆【 一律3%に】
  これまでの民事法定利率は5%、商事法定利率は6%です。これは、制定当時の取引における金利を基準にしたものです。昨今の金利は、1%にも満たない状況で実情に合っていません。
 今回の改正により、商事法定利率は廃止となり、一律に、3%となります。また、改正後3年ごとに法定利率の見直しが行われることになりました。
 なお、2020年4月1日前に利息が発生している債権、並びに、遅延損害金が発生している債権(例えば、交通事故などの損害賠償請求権)については、旧法が適用されます。1つの債権は、同じ利率が適用されるわけです。

◆【中間利息の控除】
 交通事故の逸失利益(将来の得られたであろう収入分)については、将来分をまとめて先に受け取ることになるので、中間利息が控除されています。その利率も、3%に変更となります。なお、事故時が、改正前の場合は、5%となります。
 例えば、27歳で交通事故で死亡した場合で見ますと、これまでは、40年分(67歳まで働いたとして)は、約17.1×年収でしたが、3%で算定すると約23.1×年収となるますので、かなりの増額となります。

◆【改正全体についての参考HP】
 これまで紹介したもののほかにも、債権譲渡、危険負担などいくつかの項目について改正されていますので、気になることがありましたら、ご相談ください。

  *民法の一部を改正する法律(債権法改正)について(法務省)
   http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_001070000.html
  *重要な実質改正事項
   図表で解説されており、わかりやすいです。(pdf版)
   http://www.moj.go.jp/content/001259610.pdf
(弁護士 中尾 誠)
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2020年4月11日
民法(債権法関係)が施行されます~その③【定型約款に関する改正(新設)】
 契約に関する民法の規定(債権法)改正の3回目で、今回は定型約款に関する改正(新設)についてです。

◆身の回りの定型約款
 火災保険に入る時、細かく色々なことが書かれた書類(約款)を渡されます。インターネットで買い物をする時も、その事業者の利用規約に同意しないと手続きが出来ないようになっている例が多くあります。JRに乗る時も、運送約款が適用されることになっています。
 利用者は、それらの約款を読んだ上で契約をすることは、そのほとんどの場合ありません。しかし、問題が生じた場合、「約款」が根拠となり、事業者に有利なように解釈されるということが通常でした(もちろん、裁判で争って、その規定の適用は出来ないという判例も出されていますが)。

◆規定の新設
 「定型取引を行うことの合意をした者は、①定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき、ないし、②定型約款を準備した者があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を表示したときは、定型約款の個別の条項についても合意したものとみなす」 との規定(民法548条の2)が新たに設けられました。
 しかし、その場合でも、細かく書かれたすべての条項が適用となるのではなく、「①相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、②その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして信義則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるもの」 については、「合意しなかったものとみなす」 としています。わかりにくいと思いますが、そのような規定です。

◆約款内容の開示
 取引の前、又は取引後の相当期間内に、事業者に対して利用者が定型約款を開示するよう請求した場合は、事業者は開示することが義務づけられました。開示しないときは、定型約款による合意はなかったことになります。
(弁護士 中尾 誠)
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2020年3月16日
民法(債権法関係)が施行されます〜その②【消滅時効に関する改正について】
 今回は、「消滅時効に関する改正」についての概要です。

 消滅時効とは、お金を請求したりや物を引き渡してもらうといった債権を持っている人が一定期間権利を行使しなかった場合に、その債権が消滅する制度のことです(なお、物権と呼ばれる権利についても消滅時効がありますが本稿では触れません)。「本当は支払いをしたけれど、ずいぶん前のことで領収証がどこにいったかわからず支払ったことが証明できない!」といった不都合が起こることを避けるために設けられた制度です。
 これまでは、原則10年間債権を行使しなければ債権が消滅するとされていましたし、飲食代金などについては期間を1年とするなど、例外的に10年よりも短い時効期間が定められている債権もありました。
 2020年4月1日からは、このルールが変更され、どのような債権でも権利を行使しないまま5年(権利者が権利を行使できることを知らなかった場合には、権利を行使できるときから10年)を過ぎると消滅することになりました。原則は短くなったのですが、一方で「飲み屋のツケは1年で消えてなくなる。」などと言われていたのが、これからは5年経たないと消滅しないことになりました。なお、給料・残業代など賃金債権の時効は、当面の間3年となる見込みです。
 債権が消滅するのを防止するためには、裁判を起こしたり、相手に義務があることを認めさせるといった行為が必要になります。請求書を送り続けるだけでは、債権の消滅を防止できませんので注意してください。
 また、「協議による時効の完成猶予」という制度が新設されました。詳しくは、当事務所までご相談ください。
(弁護士 毛利 崇)
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2020年2月8日
民法(債権法関係)が施行されます~その①【保証人に関する改正について】
 契約に関する民法の規定(債権法)が改正され、今年の4月1日から施行されます。誰にも関係しうる改正であり、何回かに分けて概要を説明します。今回は「保証人に関する改正」です。

 「保証契約」とは、本人(主債務者)が支払わない場合に代わって支払う義務を負う契約です(以下の説明は「連帯保証」の場合も当てはまります)。「迷惑をかけない」「名前だけ」などと言われて保証人を引き受け、大変なことになってしまうことがあります。保証契約はどれもリスキーですが、中でも保証契約時点で主債務の金額が決まっていない「根保証」は、予想外の負担を背負い込まされ特別危険です。
 現在は、「根保証」のうち、個人がする、主債務に貸金が含まれている「貸金等根保証」に限り、保証人の負担の限度(極度額)の定めが必要で(定めがなければ保証契約は無効となります)、保証期間(確定日)は原則3年最長5年とされ、特別事情(破産や死亡・元本確定事由)によって保証が終了するとされています。
 この改正で、個人のする根保証一般について、限度額の定めが必要で(定めがなければ保証契約は無効となります)、特別事情(破産や死亡・元本確定事由)によって保証が終了するとされ、「根保証」の規制が広げられました。これによって、賃貸契約や介護・医療施設の入居契約の保証人、会社の取引先との債務一般を社長が保証する場合等がカバーされることになりました。
 改正法は、施行日(4月1日)以降の保証契約に適用されます。この点について法務省は、施行日前からの賃貸契約が施行日後に更新される場合、保証人が更新契約書に署名すると、改正法が適用され限度額の定めが必要となり、限度額の定めがなければ保証契約は無効となって保証人の責任はなくなりますが、署名しない場合は、当初契約の効力が存続するとされているため更新後も保証人の責任が続くとの見解を示していることに注意が必要です。
 その他、会社や事業用融資について、事業に関与していない親戚や友人が保証人になる場合は、公証人に保証意思を確認してもらうことが必要とされました。詳しくは、ご相談ください。
(弁護士 井関佳法)
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2020年1月24日
2020年4月から新しい給付型奨学金、授業料減免制度が始まります
  〜 高等教育と教育を受ける権利〜

◆教育を受ける権利と大学等の学費
 日本国憲法26条は、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受 ける権利を有する。」と規定しています。
 これを受け、教育基本法4条3項は、「国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって、修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない。」と定めています。
 しかし、大学等の学費は、「受益者負担」の名の下に、この50年間、物価上昇率をはるかに超えて上昇しました。2019年度大学授業料は、国立は年53万5800円、私立は年75万円以上であり、初年度納付金は国立約82万円、私立約130万円以上です。奨学金は有利子貸与型が中心であり、奨学金破産も稀ではありません。

◆給付型奨学金の拡充及び授業料の免除・減額
  2017年度より日本学生支援機構による給付型奨学金制度が始まりましたが、住民税非課税世帯の成績優秀者など約2万人が対象であり、給付額も月額2万円から4万円でした。
 2020年4月からの新しい制度では、対象者及び支給額が大幅に拡充されます。
 具体的には、住民税非課税世帯、私立大学自宅外通学の場合、月額7万5800円(年90万9600円)が支給されます。国公立大学自宅通学の場合は月額2万9200円です。また、これに準ずる世帯に対しても、上限額の3分の2、あるいは3分の1の金額が支給されます(4人家族で年収461万円未満など)
 さらに、新しい給付型奨学金の対象者は、大学等に申請することにより、最大で年間約70万円の授業料の免除・減額を受けることができます。入学金の減免もあります。
 この制度では、学ぶ意欲がある学生という要件があり、学業成績、学習計画書等の提出が必要です。短大、専門学校も対象であり、現在の大学等在学生も対象となります。新しい給付型奨学金制度について、その対象者、対象学校などの要件について、早めの確認・検討をお勧めします。
(弁護士 吉田眞佐子)
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2019年11月30日
天皇の即位の礼に合わせて行なわれる恩赦
 政府は、10月18日、天皇の即位に合わせ、恩赦の実施を決めました。恩赦には、罪の種類を定めて行う大赦、有罪を言渡された特定の者を対象とする特赦、刑の言渡しを受けた者に対して罪の種類を定め又は特定の者に対する減刑、刑の言渡しを受けた特定の者に対する刑の執行の免除、有罪の言渡しを受けたため資格を喪失又は停止された者を対象とする復権が定められています(恩赦法)。
 今回の恩赦では、罰金刑を受けて罰金を納め3年間再犯のない人を対象とする復権と、刑の執行が困難な重病者を個別に審査して行う刑の執行の免除が行われ、対象者は約55万人とされています。復権が実施されると、罰金刑を受けて喪失・停止された国家資格や公民権などの再取得や回復ができます。
 恩赦の制度は、イギリス、タイなどの君主国だけでなく、フランス、アメリカ、ロシア、ドイツ、韓国など共和制の国にも存在します。日本の恩赦の起源には、顕宗天皇元年(485年)説や孝徳天皇の大化6年(650年)説がありますが、奈良時代には実施され、その後皇室や幕府の慶弔時に行われました。大日本帝国憲法は、天皇が恩赦を行うとの規定(第16条)を置き、朝鮮統治、大正天皇御大礼、昭和天皇御大礼、紀元2600年祝典、日本国憲法公布などの際に恩赦が行われました。日本国憲法下では、講和条約発効、明治百年記念、沖縄復帰、今上天皇御即位などに際し、9回の恩赦が実施されました。
 しかし、恩赦制度には、裁判所が法律に従って判断して確定した刑罰の効果を内閣が覆すのは、日本国憲法が定める権力分立原則に反するとの批判や政治的に利用されているとの批判、犯罪被害者保護の観点からの批判があります。この機に恩赦の制度や運用について考えてみる必要がありそうです。
(弁護士 杉山潔志)
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2019年10月13日
動物と人間の間
 2019年の6月に動物愛護法(動物の愛護及び管理に関する法律)が、全会一致で改正されました。主な改正点は、動物虐待罪の厳罰化(1年以内に施行)と犬猫へのマイクロチップ装着の義務化(3年以内に施行)です。
 みだりに愛護動物を殺傷した時の罰則が、「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」から「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」に引き上げられました。当初、この種の法律ができた時(1973年)の罰則は、「3万円以下の罰金又は科料」でしたので隔世の感があります。
 少し話がそれますが、近時、ペットが交通事故などで死亡した場合に慰謝料が認められるようになっています。
 動物に対する扱いが、段々、人間に近づいているようです。
 犬猫へのマイクロチップ装着義務の対象は販売業者だけで、一般の飼い主については努力義務となっています。ペットが迷子になったり(すぐに飼い主の元に戻ることができる)、遺棄されたり(遺棄しにくくなる)した場合に役立つというものです。近い将来、すべての犬猫に適用されることになる流れです。
 迷子の防止、遺棄の防止という意味で言えば、人間へのマイクロチップ装着も「便利」なものであり、動物と人間の垣根が低くなる中、近い将来に現実化するのでしょうか。
 人間に強制的にマイクロチップが装着されるということを考えた場合、強い違和感を覚えます。ずっと、誰かに見張られている、自由がないという感じです。
 「いぬのきもち」「ねこのきもち」になった場合、同じように感じるのではないでしょうか。その意味で、やはり、「動物は人間とは違う」という扱い(厳罰化と矛盾)なのだと思います。
 私には、よくわからない、「全会一致」の改正です。

(弁護士 中尾 誠)
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2019年8月8日
遺留分制度が変わりました
◆遺産分割協議
 被相続人が遺言書を書いていなければ、まず法定相続人が遺産分割協議を行い、話し合いがまとまればその内容で遺産を分け、まとまらなければ法定相続分で遺産を分けることになります。
◆遺言
 他方、遺言書がある場合は、遺言に従って遺産を分けます。法律は、原則として被相続人の意思を尊重しているのです。
◆遺留分の権利
 ただし、遺言で冷遇された兄弟姉妹以外の法定相続人に、法定相続分の2分の1(相続人が直系尊属のみの場合は3分の1)の遺産の取り戻しを認めており、この権利を遺留分の権利と言い、例外的に法定相続人の権利にも配慮しているのです。
◆改正(1)・・・遺留分の権利を金銭債権化した
 遺留分の権利を行使すると、これまでですと、遺贈や贈与の対象が不動産等であれば、受遺者や受贈者と慰留分の権利を行使した者との共有となっていました。しかし、共有となるとややこしので、今回の改正で、遺留分の権利は金銭債権として行使されることとなりました。
◆改正(2)・・・期限の許与
 ただ、遺留分の権利行使を受けた受遺者や受贈者がお金を持っていなければ、支払いに窮することも考えられます。そこで、遺留分の権利の行使を受けた者は、支払いまでに時間がほしいと言うことができ、裁判所は期限を許与できるとされました。
◆改正(3)・・・10年までの贈与に限られる
 10年より前に相続人になされた贈与は対象とされなくなるなど、遺留分の額を求める計算方法にも少し変更がありましたので、詳しくはおたずねください。

(弁護士 井関佳法)
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2019年7月11日
相続法が大きく変わりました「特別の寄与」制度の新設(2019年7月1日施行)
 *相続人ではない「親族」による被相続人の療養看護等の「特別の寄与」
 これまでは,相続人ではない家族は,被相続人の介護をしても,遺産の分配を受けることはできませんでした。この不公平を解消し,被相続人の療養看護等に尽くした人の貢献に報いるために,「特別の寄与」制度(民法1050条)が新設されました。
 請求できる人は,相続人以外の被相続人の親族(6親等内の血族,3親等内の姻族)です。配偶者の親の介護をしていた人が,相続開始時には既に離婚しており親族ではない場合は,請求できません。
 要件は,「無償で療養看護その他の労務の提供をしたこと」により「被相続人の財産の維持又は増加」について「特別の寄与」があることです。

*特別寄与料の額の決め方
 特別寄与料の金額は,当事者間で協議をし,協議ができない場合は,家庭裁判所において調停,審判の申立をします。特別寄与料の額は,被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることはできません。
 相続人が数人いる場合,特別寄与料は,法定相続分に応じて負担します。
 具体的金額は,介護サービスを受けた場合にかかる費用などをもとに計算します。
 本請求をする方は,介護の内容や時間などを記載した介護日誌や領収書など介護の状況を示す書類等を作成保管しておくことをお勧めします。

*本制度は本年7月1日以降の相続開始に適用。権利行使期間の制限あり
 家庭裁判所における調停・審判の申立てには,特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月以内,相続開始の時から1年以内,という期間制限があります。
 特別寄与料請求をお考えの方は,早めの法律相談をお勧めします。
(弁護士 吉田眞佐子)
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2019年5月12日
無投票当選増加・投票率低下の2019年統一地方選挙

 2019年統一地方選挙は、全国的に無投票当選者が増え、投票率も低下傾向が続きました。京都では、前半戦の京都府会議員選挙では、無投票当選が過去最多の5選挙区13人、投票率は過去最低の41.75%となり、全選挙区で選挙のあった京都市会議員選挙では過去最低の38.06%の投票率でした。後半戦の3市長選挙の投票率は、議員選挙もあった京田辺市、木津川市で前回を上回ったものの、向日市は過去最低、8市・町会議員選挙は和束町で無投票、京田辺市以外の6議会選挙で過去最低の投票率でした。
 地方自治は民主主義の学校である —— この言葉は、イギリスの法学者で下院議員などを歴任したジェームズ・ブライスの言葉です。身近な問題を扱う地方自治への参加を通じて民主主義の担い手としての能力を身に付けられるという意味です。日本国憲法は、大日本帝国憲法にはなかった地方自治に関する規定を置き、地方自治を憲法上の制度として位置付けています。
 立候補者減少や投票率低下の背景には、「誰がなっても政治は変わらない」、「信頼できる政党がない」などの有権者意識の広がりがあるようです。共産党以外がオール与党となって議会が地方政治をチェックできてない、政党が住民要求に応える政策を提示できてない、などに原因がありそうです。
 暴言で辞任した泉市長が無投票当選した明石市では、2人目以降の子どもの保育料無料化、子ども食堂の小学校区ごとの設置、不払い養育費の立替払いなどユニークな子育て支援を行っており、子育て世代の流入で減少人口がV字回復しています。
 首長と議員が住民要求をくみ上げ、“住民の福祉の増進を図ることを基本”(地方自治法第1条の2第1項)として政策能力を鍛え、議会を活性化し、それを住民にアピールしていく必要があると思われます。

(弁護士 杉山潔志)
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2019年4月4日
学生のアルバイト

 新学期が始まり、アルバイトを始めた学生さんも多くいると思います。
 「子は、親権を行う者の許可を得なければ、職業を営むことが出来ない」「未成年者がその営業に堪えることが出来ない事由がある時は、親権を行う者は、その許可を取り消すことができる」「営業を許可された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する」という規定が、民法にあるのを知っていますか。未成年者がバイトをするために親の同意がいることは、覚えておいてください。
 どのような仕事をするのか、働く時間はどうか、給料はいくらもらえるのか、働く期間はいつまでか等について、バイトを始める前にきっちりと確認をしておくことが大切です。労働条件を明示した書面をもらってください。使用者には、書面を労働者(バイトをする人のこと)に渡すことが、義務づけられています。
 一方的にシフトに入れられた、決められた時間を超えても帰してもらえなかった、休憩時間をもらえなかったといったことも起こるかもしれません。最初に合意した内容を超えた時間・日に働く必要はありません。また、6時間を超えて働く時は、少なくとも45分の休憩時間を取ることが出来ます。
 バイト代がきっちりと支払われるよう、時給であればその時間管理がどうなっているか、タイムカードで計算されるのであれば打刻後に働くことは無いか、一方的に単価が下げられていないか等に、気をつけてください。
 仕事中に怪我をした時は、労災として、労災保険から治療費を受け取ることが出来ます。自分で負担する必要はありません。また、バイト中にミスがあったとして、罰金を取るような例もありますが、あなたがよほど悪い場合以外は、支払う義務はありません。
 一番大事なことは、問題を自分で抱え込まないことです。
 バイトを行いながらの学生生活は大変でしょうが、学業を怠らず、頑張ってください。

(弁護士 中尾 誠)
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2019年2月18日
相続法が改正されました(2)

婚姻期間20年以上の配偶者が居住用土地や建物の贈与を受けていた場合

*今回は、民法の相続の「特別受益」という制度の改正について説明します。
 「特別受益」とは、相続人が、被相続人から生前に受け取った財産で住宅資金や生計の資本となる金銭等(遺贈)、 また、相続開始後に遺言遺により受けとった財産(贈与)など、特別に利益を受けたものをいいます。
 ある相続人が特別受益を受けている場合、遺産分割に際して、亡くなった時に残っていた財産(遺産)だけを対象に遺産分割すると、 特別受益を受けていた人が沢山もらうこととなり不公平となります。 そこで、遺産に特別受益をプラスして、法定相続分で分けることとなっています。 特別受益を受けていた相続人は特別受益でもらった分の不足分だけもらうこととして、公平を図ろうとしているのです。 但し、被相続人が、特別受益をプラスせずに法定相続分で分けるよう意思表示していれば、その意思に従うべきこととされており(持ち戻し免除の意思表示と言います)、 被相続人の意思を尊重することとしています。

 今回の改正では、婚姻期間が20年を超える夫婦の一方が、他方に居住用の土地や建物を遺贈や贈与した場合は、 持ち戻し免除の意思表示を推定することになりました。 自宅の贈与や遺贈を受けていても(特別受益があっても)、原則として、特別受益をプラスせず残った預貯金などの遺産だけを対象に法定相続分で分けることになりました。 長年連れ添った連れ合いに自宅を残すのは、連れ合いが安心して生活できることを目的としていて、持ち戻し免除の意思が推定できると考えたのです。 配偶者を保護して、住むところも生活費も保障しようとする改正がなされたのです。

(弁護士 井関 佳法)
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2019年1月23日
客引き行為の禁止とクーリングオフ

*客引き行為の禁止
 京都市客引き行為等禁止条例は、客引き行為等禁止区域での「客引き行為(キャッチセールス)」「客待ち行為」等を禁止しています。
 「客引き行為」とは、道路など公共の場所において、不特定の者の中から相手方を特定して客となるように誘う行為です。「客待ち行為」とは、客引き行為をする目的で、相手方となるべき者を待つ行為です。
 同条例は、違反者及び店舗、事業者に対する指導、勧告、命令及び過料の制裁、命令違反者名の公表を定めています。禁止区域は京都市ホームページをご覧ください。
 同条例は、京都市内全域ですべての業種の事業者に対し「客引き行為等」を行わないようにする努力義務を定めています。
 さらに、京都府迷惑行為防止条例は、人の身体又は衣服をとらえたり、進路に立ちふさがり、つきまとう等しつこい方法での客引き行為を禁止し、罰金・懲役など厳しい罰則があります。

*キャッチセールスは、クーリングオフ可能です
 消費者保護のために、特定商取引法は「訪問販売」等の場合、クーリングオフの権利を定めています。「営業所以外の場所で呼び止めて営業所等に同行した」とき、つまりキャッチセールスも、同法の「訪問販売」にあたります。消費者は、クーリングオフの方法などの記載がある法定の契約書面を受領した日から8日間は、無条件で契約解除できます。この書面の交付がなければ期間は進行しませんから、いつでも解除可能です。
 事業者は、消費者からクーリングオフをされると、代金全額の返還及び商品返還費用の負担義務があります。
 また、高齢者など顧客の判断力不足に乗じた勧誘や、契約解除を妨げるために化粧品などの消耗品を使わせる行為等は禁止されており、行政処分がされる場合があります。
 早めの専門家、消費者センターへのご相談をお勧めします。

(弁護士 吉田 眞佐子)
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2018年12月24日
相続法が改正されました 〜配偶者の居住権〜
 民法のうち、相続について定めた相続法が改正されました。そのうち、新設された配偶者の居住権について紹介します。
 
 従来は、配偶者が家に住み続けるために遺産分割で不動産を取得した場合、不動産の価値の分だけ預金等の遺産を取得できる額が少なくなってしまい、配偶者が生計に困ることがありました。その対策として、以下の(1)(2)が新設されました。
(1)配偶者短期居住権
−遺産分割が終了するまでの間、配偶者が、無償で(他の相続人にお金を支払うことなく)家に住み続けられる権利
(2)配偶者居住権
−遺産分割や遺言により、配偶者が、終身または一定期間、家に住み続けられる権利
 配偶者居住権を取得した場合、配偶者はその価値に相当する財産を相続したことになります。終身居住する場合、配偶者の年齢が低ければ、その分長く住むことになるので、算定される価値は高くなります。
 もっとも、配偶者居住権は所有権と異なり、住めるための権利なので、配偶者が家を売却してお金に換えるといった処分をすることはできません。その分、配偶者居住権の価値は低く算定されます。それにより、預金等、配偶者が取得できるその他の財産は多くなります。つまり、配偶者は、改正前と比べ、それまで生活していた家に住み続けながら預貯金等の遺産を多く取得することが可能になるのです。
 これらの権利は、2020年4月1日以降に亡くなられた(相続が開始された)時に適用されます。要件や手続等の詳細、また、これ以外の重要な相続法の改正もいくつかありますので、ご不明な点は、お気軽にご相談ください。
(弁護士 清洲 真理)
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2018年11月17日
医学部入試から女性差別を考える
 東京医科大学は、2018年8月7日、入試において女子受験生を一律減点するなどの操作をしていたとして謝罪しました。結婚や出産で離職するケースが多く、短時間勤務になりがちな女性医師を増やしたくないのがその理由のようです。
 その後、順天堂大学医学部などでも女性差別や浪人生差別の疑いが発覚しました。文科省の調査では、ほとんどの大学医学部で、女子受験生が男子受験生より合格率が相当低いことも明らかになりました。このような入試差別は、大きな社会問題となっています。
 日本国憲法第14条は、法の下の平等を謳い、性別による差別を禁じています。憲法は国民と国との関係を規律する最高法規ですが、社会秩序の基準をも示しており、私人関係においても憲法の理念が実現されなければなりません。私立大学においても女性差別は許されないというべきです。
 ところで、大学教授が行なったアンケート調査によれば、女子学生を含めた多くの学生が、「女性専用車両やレディスデーが男性に対する逆差別に当たる」と考えているとのことです。電車内での痴漢行為で傷付いた女性や賃金差別によってレストランでの食事の機会などが少ない女性がいる現実に眼が向けられていないようです。他方、大学進学における差別を尋ねても、大学生から特段の指摘はなかったとのことです。自己責任論にとらわれて、家庭の経済格差が大学進学率に影響していることに気付いていないのでしょうか。
 憲法第14条は、形式的な平等ではなく実質的な平等の実現を目指しています。社会で起きている現象の表面だけにとらわれるのではなく、背後の事情にまで目を向けて個人の尊厳が実現される実質的な平等が実現される社会をつくっていきたいものです。
(弁護士 杉山 潔志)
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2018年10月7日
台風の被害
 台風21号が京都を直撃しました。被災されたみなさま方には心よりお見舞い申しあげます。
 我が家では、隣のマンションの屋上にあるアンテナが折れて落下しそうになっていました(落下していれば、我が家の屋根や壁が壊れる)。管理会社に連絡をとり、その日のうちに、アンテナを撤去してもらいました。
 屋根瓦が飛んできて車が傷つけられたとか、逆に、自分の家の瓦によって車に傷がついたので弁償してほしいと言われているといった相談が、いくつも寄せられています。
 屋根瓦は、土地の工作物である建物の一部であり、その「設置ないし保存に瑕疵(民法717条)」があるかないかによって、弁償しないといけないかどうかが決まります。
 家の所有者は、一般に予想される強風に耐えられるよう屋根瓦を養生しておかなければいけません。とは言っても、どの程度の「強風」まで想定すべきかについては、判例はみあたりませんでした(地震については、これまでは想定すべき震度は5程度と言われていました)。
 また、どの程度の養生をしていなければいけないかについても、はっきりとした基準があるわけではありません。その周りの家の屋根の瓦は飛ばなかったかどうかも参考になります。
 被害に遭われた方については、被害の状況を写真に撮るなりして保全しておくことが必要です。また、「その家の瓦」であることを特定しておくことも必要です。
 また、加害者だと言われている方については、被害者の方に申し訳ない気持ちからすぐに被害弁償をしないといけないと思われるかもしれませんが、即断せず、少し時間を置くことが必要です。
 なお、加入している損害保険の適用については、まず、保険会社に問い合わせてください。
(弁護士 中尾 誠)
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2018年8月28日
遺言書 〜遺言で遺産をもらう人が先に亡くなった場合〜
 遺言があれば、相続を巡る無用な争いをかなりの程度、防ぐことが出来ます。できれば遺言を書いておかれることをお勧めしています。
 しかし、遺言の内容によっては、新たな紛争を引き起こしてしまうこともありますから要注意です。例えば、その遺言により遺産を相続させるとされた推定相続人が、遺言者より先に亡くなってしまう場合です。
 その場合、最高裁は、遺言の当該条項は原則無効になると言っています。すなわち、遺言により遺産を相続させるとされた推定相続人(例えば、遺言者の子供)が遺言者より先に亡くなった場合には、その代襲者(例えば、孫)に相続させる意思があったと解釈出来る特段の事情が無い限り、遺言が無効になると言っています。遺言が無効になることの結果として、その遺産は、残った推定相続人らが法定相続分どおり相続することになります。そして、残った推定相続人と代襲者とが、「特段な事情」の有無を巡って争う火種となりうるわけです。
 もちろん、遺言者は、その遺言により遺産を相続させるとされた推定相続人が亡くなった後、もう一度、遺言書を書き直すことが出来ますし、新しく遺言を書き直せば、新しい遺言と矛盾する古い遺言は当然に無効になります。しかし、認知症になってしまって、新しい遺言を書けなくなってしまっていることもあるでしょう。
 従って、遺言を書く時には、万一、その遺言により遺産を相続させるとされた推定相続人が遺言者より先に亡くなった場合には、その遺産を次に誰に譲りたいかまで書いておくべきこととなります。
(弁護士 井関 佳法)
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2018年7月29日
成人年齢が18歳になります! …2022年4月から…

*18歳で成人に
 成人年齢を20歳から18歳に引き下げる改正民法が,2018年6月13日に成立しました。2022年4月1日から施行されます。
 施行の時には,18歳から20歳未満の若者が一斉に成人することになり,成人式の会場や衣装はどうなるのか,と心配する声もあるようです。式の日程・回数など各自治体が検討していくことになるのでしょう。

*成人年齢の意味
 未成年者は単独で法律行為ができず,親権に服しています。たとえば,未成年者が奨学金やアパートを借りる場合の契約書は,親権者あるいは未成年後見人の署名押印が必要です。成人になると,単独で様々な契約などの法律行為ができます。
 成人年齢の2歳引き下げは140年ぶりであり,社会的影響が大きいものです。
 なお,飲酒や喫煙,競馬競輪などの公営ギャンブルの年齢制限は,現行通り20歳です。若年者の健康問題・依存症の危険等のためです。

*若者の自己決定の権利
 18歳は高校3年生である場合が多いのですが,働いている人もいます。
 進路など重要な事柄について本人と親の意見が異なる場合,もちろん家族で十分な話合いがされていると思いますが,未成年者は自分ひとりでは契約ができないので,親の同意がない選択は事実上困難です。成人年齢が18歳となることは,若者の自己決定の権利の尊重につながる側面があると思います。

*消費者被害問題
 未成年者の場合は,親の同意なく高額商品を購入してしまっても,後で取り消すことが可能です。18歳成人となると,高校生が簡単にクレジットカードやローン契約ができるようになり,消費者被害の拡大が心配されています。今年成立した改正消費者契約法(2019年6月15日施行)では,デート商法などの不当な契約の取消しが可能となりました。学校教育においては,消費者教育の一層の強化が必要です。

(弁護士 吉田 眞佐子)
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2018年6月10日
保証人になること
 あなたは、これまでに保証人になったことがありますか。また、なってくれるように頼まれたことはありませんか。近しい人から頼まれた時は、なかなか断りにくいものです。
 会社組織で事業をしている場合、代表者が保証人となることは日常の出来事です。会社というのは、個人とは別人格なものとして「自由に」活動することが想定されており、会社の範囲でリスクも処理するはずのものですが、「保証人」になることによって、結局、個人に責任が還元されています。
 病院への入院や施設への入所の際にも、身元保証人をつけることが求められ、誰も頼める人がいないのでどうしようかという相談も、時々あります。
 医師法(19条1項)は、正当な事由なく診察治療の求めを拒んではならないとしており、介護老人福祉施設などについても、同様の規定(省令)があります。身元保証人を見つけることができない人の入院・入所を拒否することは、「正当な事由」とはならず、出来ないはずですが、そのようには扱われていません。そのため、身元保証をする法人も現れ、そことのトラブルも発生しています。身元保証人を不要とする制度設計が必要です。
 身元保証と言えば、会社に入社する時に、求められることがあります。私も、子供の入社の身元保証人になっています。しかし、法律(身元保証に関する法律)で、存続期間は最長5年ですので、もうその期間は切れましたので安心です。
 問題なのが、借家の賃貸借契約をする際の、連帯保証人です。契約期間が2年となっていても、その後、連帯保証人には連絡せずに、契約を更新した時も、「特段の事情のない限り」、引き続き、連帯保証人としての責任を問われることになります。連帯保証人のハンコを押したことのある人は、その賃貸借契約が今どうなっているかを、一度確認してみてください。
(弁護士 中尾 誠)
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2018年3月29日
残業代って・・・?

 アルバイトですが、残業手当をもらえますか。
 アルバイトやパート、嘱託などいろいろな呼び方がありますが、いずれも労働者として労働基準法が適用されますので、残業代(時間外割増賃金)の請求が当然できます。

 チェーン店の店長を任されて、店長手当が付き、残業代が支払われなくなりました。仕方ないのでしょうか。
 「管理監督者」には労働時間規制が適用されず残業代も支払われません。しかし、店長だからといって「管理監督者」となるわけではありません。「管理監督者」と言えるためには、経営者と一体の立場と言えるかを、仕事の中味、権限(人事権等)、労働時間管理(タイムカードで管理されていないか)、賃金水準等から総合判断することになります。チェーン店の規模の小さい店舗の店長の場合、「管理監督者」と言えない可能性があります。

 残業代なしでかまわないと言って雇ってもらいました。雇主は、私の賃金には残業代が含まれているとも言っています。残業代の請求はできないでしょうか。
 残業代なしの合意や残業代込みの合意があっても、労働基準法に違反して無効です。従って、残業代を請求することが出来ます。尚、「定額残業代」制度があります。残業時間の長短にかかわらず、定額の残業代を支払う制度です。この「定額残業代」制度は、その定額残業代が、実際の残業時間を前提に法律で計算した残業代を超えている場合は適法ですが、下回る場合は不足分の残業代を追加して支払わなければ違法となります。

 (1)午前中と夕方からの2回勤務しています。労働時間は別々に計算しますか、それとも合計して良いのでしょうか。(2)夕方からの勤務が終わるのは翌日の深夜(早朝)です。労働時間は、当日と翌日に分けて計算するのでしょうか、それとも翌日にはみ出した労働時間も当日分として計算してよいのでしょうか。
 (1)労働時間は、1暦日で計算します。従って、合計して1日8時間を超えていれば残業代が発生します。(2)暦日をまたぐ労働時間は、その労働の始まる日の労働時間として計算して下さい。

(弁護士 井関 佳法)
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2018年3月2日
法定相続情報証明制度 ・・・相続の手続が少し簡単になりました・・・

◆法定相続情報証明制度が2017年5月29日より始まりました
 これは,戸籍に基づき法務局が法定相続人を証明する制度です。
 これまでは,不動産や預貯金等の相続手続には,亡くなった方と相続人との関係を示すために.戸籍等の証明書類一式を取寄せて,窓口ごとに全部の戸籍等の証明書類を提出することが必要でした。
 本制度では,(1)亡くなった方の生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍一式と(2)住民票の徐票,(3)法定相続人全員の現在の戸籍謄抄本,(4)申出人の氏名住所等の確認のための公的書類等の必要書類を法務局に提出すると,法務局が「法定相続情報一覧図」(A4用紙・提出者が作成)ついて証明をします。手数料は無料です。銀行や証券会社等の窓口には,法務局の証明書1通の提示で,相続関係を証明することができます。

◆申出は,自分でも簡単にできます
 法務局のホームページに「法定相続情報一覧図」の記入様式が掲載されています。
 法務局への申出書提出は,郵送でも可能です。ただし,亡くなった方のすべての戸籍謄本等一式を揃えるのは,実は,なかなか大変な場合があります。関係者が多人数の場合や本籍地や身分関係変更が多い場合には,相続人全員分を揃えるのに時間と費用がかかります。本申出の手続は,専門家に依頼することができます。

◆本制度の利用について
 本制度は不動産がない場合でも利用可能です。しかし,法定相続人のための制度ですので,それ以外の立場の方は申出できません。本制度の利用により,各窓口の相続関係の確認の手間が省けることとなり,相続手続が円滑になりました。また,戸籍関係書類には亡くなった方やそのご家族の戸籍上の様々なプライバシーが出ていますが,各窓口には提出不要となり,心理的負担も減少しました。

(弁護士 吉田 眞佐子)
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2017年12月25日
脱走と敵前逃亡
 2017年11月13日、北朝鮮軍の男性兵士1名が板門店から軍事境界線を越え韓国側に亡命し、北朝鮮側から銃撃を受けて境界線から韓国側に約50m入った地点で負傷して倒れ、韓国側に保護されました。朝鮮戦争は、1953年7月、休戦協定が成立しましたが、戦争が終結している訳ではありません。
 軍事遂行命令を受けた兵士が戦闘現場から逃げることを敵前逃亡といい、戦闘以外の時に逃げることを脱走といいます。亡命兵士は、北朝鮮側から見れば脱走兵であり、銃撃を契機に戦闘が始まれば敵前逃亡兵となる可能性がありました。
 恐怖から逃げるのは生物の本能ですが、本能のままに逃げたのでは戦争ができません。「戦争をする普通の国」は、脱走や敵前逃亡を防ぐために軍刑法で死刑を含む極刑や上官による即時の射殺などを認めています。
 旧日本陸軍の陸軍刑法は、故なく職域を離れ又は職役に就かない者について、敵前の場合は死刑、無期若しくは5年以上の懲役又は禁錮、戦時、軍中又は戒厳地境にあって3日を経過した場合は6か月以上7年以下の懲役又は禁錮、その他の場合において6日を経過した場合は5年以下の懲役又は禁錮に処すと定めています(第7章逃走の罪第75条)。違反者は、軍法会議によって裁かれました。
 自衛隊員の場合、防衛出動命令を受けた隊員が正当な理由なく職務場所を離れ3日を過ぎた場合又は職務場所に就くように命じられた日から3日を過ぎても職務場所に就かない場合には7年以下の懲役又は禁錮に処されます(自衛隊法第122条1項2号)。また、軍法会議のような特別裁判所は、憲法第76条2項によって禁止されています。敵前逃亡の規定がなく、刑罰が軽いのは、陸海空軍その他の戦力を保持しないと定めた日本国憲法があるからです。
 安倍内閣は自衛隊条項を付加する憲法9条改正を狙っています。自衛隊が憲法の規定で認められると、敵前逃亡罪などを定める軍事刑法が復活し、戦争をする自衛隊へと変貌していくのではないかと危惧されます。
(弁護士 杉山 潔志)
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2017年9月25日
成年後見制度の利用をお考えの場合の留意点
 認知症や成年後見という言葉を身近に聞かれることが増えていると思います。ご親族などの認知症などが進行し、成年後見人を付ける事を検討されることがあるかも知れません。
 成年後見制度とは、物事を判断する能力が十分ではない方の権利を守る援助者として成年後見人等を選んで,ご本人の財産を維持管理し守るための制度です。もちろん、重要で有効な制度であることは間違いありません。
 しかし、制度の仕組みが十分理解されておらず、成年後見人が選ばれた後になって、こんなはずではなかったと困惑される場合もあるかも知れません。
(1) まず、ご家族やご親族が成年後見人に選任されるとは限りません。適当と考える候補者を書いて出すことは出来ますが、誰を成年後見人に選任するかを決めるのは家庭裁判所です。ご親族以外の、例えば弁護士や司法書士など専門職が後見人に選任される場合もあります。この家裁の決定に不服申立は認められていません。
(2) 次に、成年後見人が一旦選任されてしまうと、「やっぱり成年後見人はいらない」とか、「成年後見はやめてほしい」と言うことは出来ないとお考えください(ご本人の認知症が良くなったりしない限り)。
(3) そして、ご本人の財産は成年後見人が引渡しを受けて管理することになります。施設等への支払いは成年後見人から支払われますし、ご本人が必用なお金も成年後見人からもらうことになります。判断能力が十分でない方の財産を守るためではありますが、厳格で窮屈な制度でもあります。
 裁判所が作成している詳しいパンフレットがありますので、よく読まれることをお勧めします。
(弁護士 井関 佳法)
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2017年8月25日
雇用保険の高齢者への適用拡大と介護休業給付金
★雇用保険は,平成29年1月1日より65歳以上の方も適用対象となりました。。
 雇用保険は,1週間の所定労働時間が20時間以上であり,31日以上の雇用見込みがあれば,原則として適用の対象となります。
 
★高年齢求職者給付金
 65歳以上の労働者は「高年齢被保険者」となり,離職した場合,受給要件を満たすごとに,高年齢求職者給付金が支給されます。年金との併給が可能です。
 具体的には,離職後にハローワークに行き,求職の申込みをした上で受給資格の決定を受けます。受給資格の要件は、(1)離職していること (2)積極的に就職する意思がありいつでも就職できるが仕事が見つからない状態にあること (3)離職前1年間に雇用保険に加入していた期間が通算して6か月以上あること(賃金支払の基礎となった日数が11日以上ある月を1か月と計算)です。
 被保険者であった期間が1年以上の場合は基本手当日額の50日分,1年未満の場合は30日分が一時金として支給されます。
 
★介護休業給付金
 高年齢被保険者として介護休業をする場合,要件を満たせば介護休業給付金の支給対象となります。
 介護休業給付金は,平成28年8月1日以降に開始した場合は,給付率は賃金の67%(それ以前は40%)です。介護休業の対象家族も拡大しました(祖父母,兄弟姉妹,孫の「同居かつ扶養」の要件の廃止)。
 同一の対象家族・同一の要介護状態の場合,原則1回,93日限度となっていましたが,本年1月より通算93日分を最大3回まで分割取得可能となりました。
 
★社会保障制度を積極的に活用しましょう
 少子高齢化が進み,働く意欲と能力のある高齢者の方の働く機会を確保することが求められる社会状況です。社会保障制度は次々と変更されます。各窓口で制度を調べ,積極的に活用しましょう。
(弁護士 吉田 眞佐子)
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2017年6月11日
労基法38条1項を知ってますか?
★増える兼業・副業
 民間企業で働く労働者のうち、非正規の方の割合が40%を超えています。賃金が低く1ヶ所での勤務では生計を立てることが難しいこともあり、2カ所で働くということが増えています。1ヶ所での労働時間が短い場合、3カ所を掛け持ちしているという話も聞いたことがあります。
 企業によっては、就業規則で兼業禁止規定を設けている所もありますので、問題となる場合があります。また、自治体の一般職の臨時職員の場合は、自治体当局の許可がなければ、他の場所で働くことができないことになっています。そこだけの安い給料では生活できないのに、他で働くことの許可がいるというのは、おかしいことです。

★2カ所の労働時間を通算
 労基法は、「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」(38条1項)としており、「事業場を異にする場合」には、事業主を異にする場合も含むとされています。
 例えば、ある人が、A社で6時間働いてその後B社で5時間働いた場合、B社の3時間はその日としては8時間労働を超えるため、残業代を支払わなければならず、その前提として、B社は36協定(残業協定)を結んでいなければなりません。
 しかし、B社は、その人がA社で働いているかどうかは知らないことが通常であり、実際そのような処理(36協定を結んで、残業代を支払う)をしている職場は、見かけません。
 ほかに、社会保険はどちらの職場で入るのか、A社からB社に行く途中の通勤災害はどうなるのかなど、兼業・副業に伴う厄介な問題は多くあります。
 私自身、この規定が労基法にあることを知りました。みなさんご存知でしたか。
(弁護士 中尾 誠)
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2017年1月18日
アメリカ大統領選挙の結果に思う
 2016年アメリカ大統領選挙は、全体の得票数でクリントン氏に劣ったものの、前回民主党が制したフロリダ、オハイオなどの州で接戦を制したトランプ氏が次期大統領に当選しました。
 トランプ氏は、「メキシコ移民が入って来ないよう国境に壁を作る」、「イスラム教徒は入国禁止」などの暴言や女性蔑視発言を続け、共和党の有力者からも不支持表明が続きましたが、根強い支持率を維持し「トランプ現象」といわれました。日本に関しても「日本の核武装は結構いい」とか「日本や他の国を守るかぎり、アメリカは大金を失う。守り続ける訳にはいかない」などと発言していました。
 トランプ氏勝利の背景として、支配層への国民の批判や格差社会を放置してきた政治への反発などが挙げられています。しかし、トランプ氏は富裕層・大企業減税の推進、医療保険制度改革(オバマケア)の中止などを公言しており、トランプ氏に投票した有権者が期待する政治が実現されるかは疑問です。
 人権や平等などの価値観を標榜するアメリカでのトランプ氏の当選は、民主主義という政治原理の脆弱性を窺わせます。ベルサイユ体制と世界恐慌に苦しめられたワイマール憲法下のドイツでナチスが選挙によって台頭したことを思い起こさせました。この点で、日本国憲法96条が憲法改正手続きを厳格にしている意味が再認識させられます。
 アメリカは憲法にもとづいて政治が行なわれる立憲主義の国であり、三権分立の仕組みも有しています。今後アメリカの立憲主義がトランプ氏の暴言に立ちはだかることができるのか注目されます。日本でも、安保法制を進める安倍内閣に対する立憲主義を回復する取り組みを強める必要があると思いました。
(弁護士 杉山 潔志)
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2016年11月14日
空き家問題

◆増加する空き家
 空き家の数は、この20年間で1.8倍増加し、全国で820万戸(2013年)となっています。京都市内の空き家は、約11.4万戸で、空き家率は14.0%で、全国平均(13.5%)を少し上回っています。
 その原因は、世帯人数の減少と、持ち家の増加にあると思います。少ない家族の人が亡くなられたり、転勤で引っ越したりした場合、後に住む人もなく、空き家で放置されることになります。

◆この間の法律・条例の制定
 空き家の増加に伴い、近所の人が迷惑を蒙っているが、空き家の所有者もわからず対処のしようもない、地域の住環境も悪化するという中、「空き家等対策の推進に関する特別措置法」(2015年5月施行)が作られ、更に、この間、自治体において条例(京都市、宇治市)も作られています。
 しかし、この問題を解決するために活用すべき基本的な法令は、特別措置法や条例ではなく「民法」です。

◆対処の方法
 お隣の空き家が倒壊しそうだとか、空き家に知らない人がたむろして用心が悪いなどといったことがある場合、そのことにより被害を受ける人が、その原因となる空き家の持ち主に対して、被害が起こらないよう、また、第三者が立ち入らないように対処を求めることになります。
 困るからといって、勝手に空き家を取り壊したりすることは、出来ません。よって、空き家の所有者が誰かを調べることが必要となりますが、個人では、なかなか難しいのが現状です。
 特別措置法や条例で、自治体は、空き家の所有者を把握することができやすくなりました、また、空き家をそのまま放置すれば倒壊する危険のある場合などには、強制的にその空き家を除去することができるようになりました。
 空き家問題に対処するための根拠を自治体が持つことになりましたので、自治体に相談をすることも解決の1方法となります。

(弁護士 中尾 誠)
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2016年9月11日
子ども会等での川遊びでの事故の責任
今年の夏も暑かったですね!
 子どもさんやお孫さんが、学校、子ども会、少年野球チームなどの企画で泳ぎに行かれたかもしれません。そんな中で、万一事故が起きたときの責任問題を考えてみます。

【高校の修学旅行での海水浴での事故】について
 事前に危険な箇所を調査せず、遊泳範囲を定めなかったとして、引率教員の過失を認めた判決があります(但し、損害額は4割引)。

【子ども会で行った川遊びでの事故(9才)】について
 安全な遊泳区域を定め、区域外で遊泳しないようにする監視が不十分だったとされ、引率者の責任を認めた判決があります(但し、損害額は8割引)。

【少年野球チームで行った海水浴での事故】について
 任意団体の任意の行事である上、正規の海水浴場で、当時海は穏やかだったとして、保護者会長らの責任を否定する判決があります。

   まとめると、◆安全な遊泳範囲を定め、その範囲で遊泳させることが必要ですが、◆ボランティアでも責任問題は生じ、◆ただし、その場合には損害額で考慮される場合があるようです。保険加入は必須でしょう。十分な準備をして、自然とふれあう機会を作ってあげたいですね。
(弁護士 井関 佳法)
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2016年6月13日
衆議院の解散
 安倍首相は、年頭会見、補正予算審議などで憲法改正の姿勢を明らかにしました。そして、衆議院を解散して7月参議院議員選挙を衆参同日選挙とするとの憶測も流れました。
 一般に、同日選挙では投票率が上って浮動票に依存する政党に有利となり、衆議院解散は野党に準備不足を生じさせ、各政党が衆議院の議席獲得に動いて選挙協力が成立し難いといわれています。過去2度の衆参同日選挙は、いずれも与党の圧勝でした。安倍首相は、安保法制や経済政策などで切迫する政局の打開や消費税10%移行前を狙って衆参同日選挙を目論んだといわれており、現時点でも同日選挙の可能性がなくなった訳ではありません。
 日本国憲法には、衆議院の解散に関し、内閣の助言と承認によって天皇が行なう衆議院の解散(第7条3号)と、内閣不信任決議案の可決又は信任決議案の否決のときに衆議院が解散されない場合の内閣総辞職(第69条)の規定があります。衆議院の解散権は内閣にあるとされていますが、内閣はこれまで憲法第7条に基づき幅広い解散権を持つとの立場で衆議院を解散してきました。しかし、衆議院の解散は内閣が不信任された場合に限られるとの考え方も有力です。
 ドイツでは、議院内閣の連邦首相ではなく、連邦大統領に連邦議会の解散権がありますが、解散は、連邦議会で3回の首相指名選挙が行われても指名できない場合と連邦首相に対する不信任が決議された場合に限られ、不信任の成立は、戦前のワイマール憲法下で内閣不信任案の乱発がナチスの権力掌握をもたらした経験を踏まえ、不信任と同時に新首相が指名された場合に制限されています。
 日本の場合も、衆議院の解散・総選挙には国民の声を国政に反映させるという側面があるものの、党利党略による解散を自由にできるとするのはいかがなものでしょうか。
(弁護士 杉山 潔志)
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2016年3月13日
マンション管理組合役員の責任 〜 会計担当者が横領した場合
 マンション住まいをいたしますと、管理組合の役員が回ってまいります。組織活動や事務処理ができる方には白羽の矢が立ちます。本業が忙しくても、ボランティア精神で一肌脱がざるを得ないこともあるでしょう。やってみれば、役員さん達だけでなくご近所とのつき合いも広がり深まり、充実した任期を全うできたという方も多いと思います。
 管理組合で扱うお金は、大きなマンションだと、修繕積立金等、大変な金額にのぼります。以下でご紹介する判例は、少し深刻なケースです。役員を後任に交代した後、会計担当役員が横領していたことが発覚しました。管理組合は、会計担当者を告訴するとともに損害賠償を請求しましたが、会計担当者は経済的に窮しており全額の弁償ができませんでした。すると、管理組合が、当時の役員らにも(理事長や副理事長、会計監査)管理責任違反を理由に損害賠償を請求して訴えを起こしたのです。
 判決(東京地裁平成27年3月30日判決)は、副理事長には責任はなかったとしましたが、理事長と会計監査に対しては管理義務違反を理由に横領した会計担当役員と同額(残額)の賠償を命じました。会計担当役員は、理事長と会計監査にワープロで作成した偽造の残高証明書を示していましたが、その体裁から安易に信用したことに疑問を呈し、通帳確認を怠ったことに過失があったと判断しました。
 ボランティア精神で引き受けた役員で、互いに仲良くやっていても、特にお金に関しては厳格なチェックが求められます。この判例は、役員を引き受ける方々に注意を喚起していると考えられます。
(弁護士 井関 佳法)
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2016年2月10日
改正道路交通法と自転車事故の対策
 2015年6月1日に改正道路交通法が施行され,自転車の安全対策が強化されました。危険な自転車運転を繰り返す人には安全講習を義務づけ,一定期間内に受講しないと5万円以下の罰金を科されるという内容です。
 自転車の講習につながる危険行為は,信号無視,酒酔い運転,一時停止の無視,安全運転義務違反(傘さしや携帯電話使用の片手運転で事故を起こした等)などの14項目であり,3年以内に2回以上の違反があると受講命令が出されます。
 国内の交通事故の約2割が自転車関連事故です。自転車は免許不要で手軽ですが,自動車のような強制保険はありません。しかし,小学生の自転車にはねられた女性が寝たきり状態になり,小学生の親に9500万円の賠償を命じた判決など高額賠償の判決が相次いでいます。
 自動車の任意保険や火災保険に附帯して個人賠償責任保険を付けると,日常生活における事故である自転車事故も補償対象となります。示談代行サービス付きの保険や弁護士費用が出る保険もあります。同居の親族や別居の未婚の子も補償されるなど広範囲であり,保険料は年間2000円程度です。ただし,日常生活ではない仕事中の事故には保険が出ません。なお,自転車店での点検整備により交付される「TSマーク」(1年間有効)は,その自転車に搭乗中の人の事故についての損害賠償保険金がありますが,基本は死亡と重度後遺障害対象であり,十分な補償とは言えません。
 自転車を利用者される方は,交通ルールを守るとともに,ヘルメットの着用などでご自身の身を守ること,そして,万一の事故に備えた保険の加入をお勧めします。
(弁護士 吉田 眞佐子)
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2016年1月22日
うるう秒
 2015年7月1日午前8時59分59秒と午前9時00分00秒の間に8時59分60秒が挿入されました。この60秒は"うるう秒"です。今回の実施は、2012年7月1日に次いで26回目となります。
 地球の自転は、長期的には地球と月との潮汐作用によって次第に遅くなっている上、短期的には、潮流と海底の摩擦や地球内部のマントルの動きなどの影響で不規則に変化しています。かつての世界時は、地球の自転を24時間として天文学的に決められていましたが、現在の協定世界時は厳格な原子時計で1秒の長さが決められているため、地球の自転時間と差異が生じ、"うるう秒"が実施されているのです。今回の"うるう秒"の実施は、総務省と情報通信研究機構の連名で本年1月16日に告知されました。
 時間については、英国グリニッジ天文台子午儀の中心を経過する子午線を経度の本初の子午線とし、東経135度の子午線をもって日本の標準時と定めるとの明治19年の勅令、従来の標準時を中央標準時と称するとの明治28年の勅令が存し、(国)情報通信研究機構法第14条1項3号に情報通信研究機構の業務として「周波数標準値を設定し、標準電波を発射し、及び標準時を通報すること」との規定がありますが、"うるう秒"の実施には確たる法的根拠はありません。
 コンピューターが"うるう秒"を適切に処理できないと、様々な問題が生じます。前回の実施の際には、インターネット交流サイト「ミクシィ」でシステム障害が発生しました。近年、"うるう秒"廃止論が大きくなっています。廃止論は、航空管制などのシステム障害やGPS時刻との誤差の回避などを根拠とし、存続論は、天体観測機器のトラブル回避、地球自転と同期している市民生活などを根拠としています。
 国際電気通信連合でも、本年11月に存廃が最終決定される予定でしたが、2023年に再び検討することになりました。さて、どのように考えますか?

(□存続 □廃止 □どちらでもよい)

(弁護士 杉山 潔志)
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2015年12月6日
国に対する 「住民訴訟」
 総工費2,520億円の新国立競技場の建設計画が白紙撤回となりました。また、東京五輪のエンブレム(佐野氏が作成)について、使用を中止し、再募集することになりました。その損害は、新国立競技場については、少なくとも59億円と報道されています。
 国をはじめとするこの問題の関係者は、謝罪したり、辞任したりしています。大変な無駄遣いであり、その損害は税金で賄われることになると思いますが、関係者は誰一人として、損害の補填をするとは言っていません。
 これが自治体プロパーな出来事であれば、その損害の原因を作った首長、自治体の職員らに対して、住民の訴えに基づいて、損賠賠償の請求(損害を被った自治体に対する損害の補填)をすることができます。いわゆる、住民訴訟です(地自法242条の2)。
 この10年間だけでも、首長や職員に対して1億円以上の損害賠償が命じられたものは、10件に及びます。京都の例でいえば、京都市がゴルフ場開発用地を著しく高額で買い取った、いわゆるポンポン山事件について、当時の市長に対して約26億円の支払いが命じられました。
 住民訴訟は、自治体の住民が自治体の財務行為の違法をチェックし損害を回復する制度です。この制度の活用により、自治体の無駄遣いが是正されてきました。国が動かすお金は大きく、国民が監視するような制度がない中、無駄遣いの程度は、自治体の比ではないと思います。
 「国民」が「国」の財務行為の違法をチェックし損害の回復を図る制度として、国に対する「住民訴訟」制度を、早急に創るべきと思います。  この制度ができれば、私たち国民も、もっと税金の使い道に対して注意を払うようになるという効果も期待できます。
(弁護士 中尾 誠)
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2015年6月23日
動産が動産でなくなるとき ー付合について
 賃借人が賃借建物の明け渡しをする際に「賃借人が建物内に存置、設置している動産は賃借人が収去して建物を明け渡す。」と合意し、離婚の際に、「婚姻後に取得した動産は妻が取得する。」などと合意することがあります。テレビやタンスが動産であることは容易に理解できますが、建物に設置された給湯器やエアコンはどうでしょう。当事者の認識が一致していないと、収去や取得の際に揉めることになりそうです。
 民法第86条は「(1)土地及びその定着物は、不動産とする。(2)不動産以外の物は、すべて動産とする。」と定めています。しかし動産である給湯器やエアコンが建物に設置された場合はどうなるのでしょう。
 民法242条は、「不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。」と規定しています。付合とは、1つの物に他の物が結合することです。付合の有無は、本体の物と不分離、一体となって毀損しなければ分離できない状態となっているか否かで判断されますが、物理的な結合だけでなく、経済的一体性や持続性、附属時の関係者の意思なども考慮されます。たとえば、室内に貼った壁紙は付合して建物所有者のものとなり、賃借権や小作権を有していない者が農地に蒔いた種から生育した苗は、地主(土地所有者)の所有物となります(最判昭和31年6月19日)。裁判例では、アンカーボルトで設置されたエレベーターやネオン看板については付合が否定され、壁の内部の配管を用いた空調設備では付合が認められています。
 建物建築後に取り付けられ、建物を毀損しないで取り外せる給湯器やエアコンは、建物に付合しないと判断される場合が多いと思われますが、事後の紛争防止のため、借家の明け渡しや離婚の合意をする際に、個々の動産について収去の有無や取得者を決めておくとよいでしょう。
(弁護士 杉山 潔志)
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2015年6月1日
変な条例
 この3月に兵庫県議会で、自転車の購入者に保険の加入を義務付ける条例・「自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」が制定されました。近時、自転車事故によって多額の損害賠償が認められる例があることから、そのための対処(ないし、被害者救済)としてのものと思われます。変な条例だなと思っていたところ、京都府でも、平成19年に同じような条例・「京都府自転車の安全な利用の促進に関する条例」が制定されていました。保険に関しては、「加入するよう努めなければならない」とされており、努力義務です。このようなことを、自治体が、住民に対して、条例で義務づける(努力義務の場合を含めて)ことが必要でしょうか。
 また、京都府の条例は、「歩行者が通行している歩道等においては、傘を使用しながら運転をしないこと」を励行することがうたわれています。確かにその通りですが、わざわざ条例にすること(行政が関与すること)が、必要なことでしょうか。
 変な条例と言えば、平成25年1月には、京都市議会において、「京都市清酒の普及の促進に関する省令」が制定されています。この種の条例は、全国で初めてということで、その後、同様の条例制定の動き(「秋田の酒による乾杯を推進する条例(秋田県)」「地元本格焼酎による乾杯を推進する条例(宮崎県日南市)」など)が全国に広まっているとのことです。
 京都市の条例は、「清酒による乾杯の習慣を広めること」を目的としているほか、「市民の協力」として、京都市(ないし事業者)が清酒の普及の促進に必要な処置を講じる取組をすることに、「市民は協力するよう努めるものとする」としています。清酒が苦手な市民もおり、そんなことを行政から言われることはないと思いませんか。
 「特に害はないのでは?」と言われればそれまでですが、皆さんは、どう思われますか。
(弁護士 中尾 誠)
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2015年3月17日
京都市の生活保護廃止処分を違法とする判例が出されましたので、紹介します。
 (最高裁平成26年10月23日判決)
 Aさんは、昭和61年からずっと自宅で白地の反物に手描きで柄を付ける手描き友禅の仕事をしてきましたが、平成8年から生活保護を受けていました。受給当初の仕事の収入は月額13万円程でしたが、平成12年以降は月額2〜6万円程度で推移していました。Aさんは、平成6年に小型自動車を買い、現在まで仕事に使ってきました。
 京都市は、平成18年5月、Aさんに「友禅の仕事の収入を月額11万円(必要経費を除く)まで増額してください」という指示書を渡しました。収入を増やすことができるはずもなく、京都市は同年9月に「指示が守られていない」と言って生活保護を廃止したのでした。ひどいですね!
 京都地裁は、Aさんを勝訴させましたが、大阪高裁では逆転敗訴でした。大阪高裁は、指示書には「友禅の仕事の収入を月額11万円(必要経費を除く)まで増額してください」としか書かれていないけれど、仮に収入を増額できなくても、車を手放せば生活保護の廃止はしないという趣旨であったから、京都市の指示は現実不可能だったとは言えないと言ったのでした。
 これに対して最高裁は、Aさんを再び勝たせました。生活保護法上、福祉事務所は指示や指導ができ、従わない場合は生活保護の廃止ができるとされていますが、生活保護法施行規則上、その指示は書面でなされなければならないと定めています。最高裁は、書面による指示を求める趣旨は、福祉事務所の恣意を抑制し、保護受給者の権利を擁護するためであり、この点で高裁は間違った判断をしているので、判断のやり直し(差戻)を命じたのでした。
 生活保護への攻撃が強められ、生活保護法も改悪された中、保護受給者の権利を正当に認めた判決として注目されるべきでしょう。
(弁護士 井関 佳法)
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2014年9月26日
児童手当の振込口座の差押は違法!
 鳥取県は、滞納税金を徴収するために、滞納処分として、児童手当の振り込まれる口座を差し押さえ、振り込まれていた児童手当を滞納税金の支払いに充てました。(租税の場合、確実能率的な徴収を図るため、国や自治体に、裁判所を利用せずに自ら差し押さえをする権限が認められています。)
 しかし、鳥取地裁、その控訴審である広島高裁松江支部は、このような差し押さえは許されないとして、差し押さえ金額のほぼ全額の返還を命ずる判決を下しました。
 児童手当を支払ってもらう権利は、児童の健やかな成長と家庭生活の安定に必要なお金であるとの理由から、差し押さえが禁止されています。しかし、児童手当が一旦口座に振り込まれると、それ以外のお金と混ざってしまいますし、それを差し押えてはいけないと定めた直接の規定はありません。鳥取県は、そこに目を付けて差し押さたのです。
 しかし判決は、県は児童手当が振り込まれる日であることを認識した上で、振り込まれた9分後に差し押さえしており、しかも口座には振り込まれた児童手当以外には殆ど残金がなかったことから、差し押えたのは預金口座であるが、差し押さえが禁止されている児童手当を支払ってもらう権利を差し押えたのと変わりないとの理由から、差し押さえを禁止した児童手当法の趣旨に反して違法だと断罪しました。
 この判決の考え方は、差し押さえが禁止されている生活保護や年金にも当てはまるばかりでなく、租税以外の公営住宅家賃や公立病医医療費回収のための民事上の強制執行にも先例として参考になると言われています。
 これは重要な判例ですが、未だ行政の現場担当者に周知されていないようです。しっかり監視していきましょう。
(弁護士 井関 佳法)
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2014年7月9日
特殊公務災害 −震災と自治体職員
★震災と特殊公務災害
 東日本大震災の直後に、津波が襲来する直前まで、防災無線放送で住民の皆さんに避難を呼びかけ、津波の犠牲となった南三陸町の女性職員のことを覚えていますか。
 自治体職員が仕事中に災害に遭った場合は、公務災害として損害の補償がされます。また、警察官、消防職員、災害応急対策従事職員などについては、「高度の危険が予測される公務中の災害」の場合は、通常の1.5倍の補償を受けることが出来ます。特殊公務災害と言います。
 震災の時、上記の女性職員をはじめ、多くの自治体職員の方が、住民の避難の指示・誘導などを行っている中で亡くなられています。私は、当然、このような場合、特殊公務災害が認められると思っていました。しかし、基金支部(公務災害の認定をする機関)において、多くの事例について、非該当になっているという記事を見ることが多くありました。
★審査会での認定・新たな通知
 その後、支部審査会(非該当となった事案を再度審査する機関)で、特殊公務災害が認められる事案が相次ぎました。国会での議論もあり、基金(基金支部との関係では本部)がこれまでの処理を見直すことになり、この5月1日にその旨の通知(事務連絡・平成26年5月1日)を震災の事案を担当する各基金支部に出しました。
 具体的には、「支部審査会において取消裁決の出された事案の概要一覧」を示して、「既に特殊公務災害に該当しないと判断された事案についても、再度、特殊公務災害の認定請求が行われた場合には改めて審査を行うこと」としています。
 通常、一度手続きが終了したものについて、再度同じ手続きはできません。また、これから申請する場合も、これまでよりは広く認めることになりますので、大きな前進です。
 みなさんとは直接関係ないことかもしれませんが、被災地ではこのようなことも起きています。
(弁護士 中尾 誠)
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2014年3月13日
犯罪被害 −法改正−
 犯罪被害にあうことは、心身ともに大変辛いことです。犯罪被害者の保護を図る方向で法改正がありましたのでご報告いたします。

 順番にご説明します。犯罪の被害にあった場合、早く被害届を提出することが必要です。さらに処罰を求める意思を明らかにする告訴も検討すべきです。告訴があれば、事件は必ず検察に送致され、処分結果が通知されます。強姦罪等一部の性犯罪や、名誉毀損、器物損壊などは、告訴がなければ起訴できません(親告罪)。

 一定の犯罪の被害者は、警察から被疑者の氏名や年齢、逮捕の事実、起訴・不起訴等の処分結果を連絡してもらうことができます。殺人、傷害、強制わいせつ、強姦、ひき逃げや交通事故の死亡事故等です。

 上記一定の犯罪被害者は、起訴されて刑事裁判が始れば、裁判へ正式に参加することができます(裁判所の許可を得て被害者参加人となる)。その場合には、裁判への出席、検察官に意見を述べ説明を受けること、裁判で意見を陳述すること等が認められます。これらについて、弁護士を頼むことができます。経済的に余裕がない場合は、国選弁護制度もあります。

 この度、被害者参加人が裁判所に出頭するための旅費等が支給してもらえるようになりました。国選弁護の利用基準が緩和されました。

 不起訴にされ納得できない場合は、検察審査会に審査請求することができます。
(弁護士 井関 佳法)
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2014年2月6日
架空請求・無許可の債権回収会社の請求に気をつけて!
1 突然,知らない業者から「未納のサイト利用料の譲渡を受けた」「カード債権を譲り受けた」という郵便・電報が来ることがあります。通知文には「ただちに強制回収の手続をとる」「大至急電話せよ」などと書かれているケースも。「覚えてないけど払える金額だから」「昔の借金が残っていたかも」と思い連絡をとったり支払ったりすると,その後も繰り返しいろいろな形で請求されることがあります。
 知らない業者からの請求の場合,具体的な対処法は次のとおりです。
(1)相手に連絡をとらないこと。電話番号や勤務先などの個人情報を聞き出されてさらなる被害を受けるおそれあり。
(2)請求の手紙や葉書などは大切に保管すること。後でトラブルになったときの証拠になる。
(3)正当な請求かどうか不安がある時は,自分で相手に接触はせず,弁護士など専門家・専門機関に相談する。借りた覚えがあっても過払いであったり,消滅時効を主張できる可能性あり。
(4)悪質な行為が繰り返されるときは,警察に届け出る。
2 実は,債権回収業務は,弁護士でない者が行うことは禁止されています。そして,「何人も,他人の権利を譲り受けて,訴訟,調停,和解その他の手段によって,その権利の実行をすることを業とすることができない」(弁護士法73条)のであり,違反すると刑罰の対象となります。
 例外として許されるのは,債権管理回収業者(サービサー)として法務大臣が許可した債権回収会社のみです。資本金5億円以上で取締役に弁護士が入っているなどの厳しい要件があり,許可業者名は法務省のホームページで確認できます。許可業者のなりすましの場合もあるので,正しい連絡先を確認することが必要です。
 貸金業者から債権を買取り無許可で債権回収業を行っていた業者がサービサー法違反で有罪になっています(最高裁平成24年2月6日決定)。
(弁護士 吉田 眞佐子)
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2013年12月13日
老後と後始末
 おじいちゃん・おばあちゃんから孫へ教育資金を贈与することについて、贈与税がかからない制度が今年4月から実施されています(平成27年12月31日まで)が、取り扱い開始から2か月半で大手信託4行の残高が1,000億円を超えたと言われています。
 日本の高い教育費を是正することが、本来の国の役割だと思いますが、高齢者の気持ち(亡くなってからよりも、生きている間に孫に喜んでもらえたらそれの方がよい)を巧みに利用したもので、国民に自助(家族・親族内)努力を強いるものであり、このような動きには注意が必要です。
 それはともかく、高齢者にとって、その財産をどう相続させるかということが、大きな関心事の1つのようです。私は、「自分の財産なのだから、全部、使ってしまったらいいのでは」ということをよく言いますが、必ずしも、賛成はしてもらえません。
 遺言を書く場合、次のような点を頭に入れておくことが必要です。(1)遺言は、書いた時点での本人の意思ですが、その後、気が変わった時に書き直さないと、本人の意思に反するような遺言が効果を持ちます。(2)認知症などになり、意思能力がなくなる(ないと判断される)と、遺言は書くことができません。(3)相続人間の取り分(法定相続分)とは異なる分け方を決めることが多いですので、そのことにより、亡くなられた後に、揉め事が発生することもあります(もちろん、書かないと揉める場合もありますが)。また、その形式(主には、自筆遺言、公正証書遺言のいずれとするか)についても、検討が必要です。
 どのような遺言を書くか(書かないか)は、その人と家族(相続人)との関係における、最後の関わり方であり、正解は、それぞれによって異なります。じっくりとお考えください。
(弁護士 中尾 誠)
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2013年10月15日
非嫡出子(婚外子)相続差別違憲判決の意味
 民法第900条4号は、非嫡出子(婚外子)の相続分は、嫡出子の相続分の2分の1とすると定めています。最高裁判所は、婚外子からこの規定にしたがって行われた遺産分割審判に対する不服申立(特別抗告)に対し、民法が法律婚主義を採用していることを根拠として繰り返し抗告申立を退けてきました。)
 ところが、最高裁判所は、2013年9月4日、子にとっては自ら選択、修正する余地のないこと(父母が婚姻関係になかったこと)を理由として、その子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、権利を保障すべきだという考え方が確立されてきており、2001年7月当時には嫡出子と非嫡出子の相続分を区別する規定の合理的根拠が失われ、憲法第14条に違反していたと判断しました。ただし、既に行われた遺産分割には判決の影響は及ばないと判示しています。)
 この違憲決定は、政府に民法第900条4号の改正を促すことになりますが、影響はそれだけに留まらないと思われます。)
 まず、法制審議会総会は、1996年に家族法の改正を決定し、嫡出子と非嫡出子の相続分の同等だけでなく、選択的夫婦別姓などの改正も政府に答申しました。しかし、自民党内の保守的な潮流の抵抗にあって、家族法改正が阻まれてきました。この違憲決定は、家族法の見直しにも影響を与えそうです。)
 次に、憲法改正論議への影響です。自民党は、2012年、日本国憲法改正草案を発表しました。改正案では家族を尊重されるべき社会の自然かつ基礎的な単位ととらえています。この違憲決定は、法律婚家族を重視する改正草案の考え方を批判する内容を含んでいます。)
 この違憲決定は、憲法が国民の人権意識に支えられてその内容を豊かにすること、不断の努力によって自由と権利を保持しなければならないこと(憲法第12条)の意味を私たちに示すものとなっています。
(弁護士 杉山 潔志)
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2013年9月21日
「いじめ防止対策推進法」と大津市いじめ事件
 2013年6月28日に「いじめ防止対策推進法」が公布されました(3か月後施行)。
 その特徴は,(1)学校にいじめ防止対策の組織を設置 (2)学校は早期発見のための調査や相談体制の整備 (3)いじめがあった場合,学校はすみやかに事実確認し,被害者側への支援,加害者側への指導助言をする (4)学校はいじめが犯罪行為に当たるときは警察と連携して対処。重大な被害が生じるおそれがある場合は警察に対し通報する義務 (5)加害者側には懲戒や出席停止を行う,などです。

 いじめは,被害者に精神的・身体的苦痛を与えるものであり,重大な人権侵害行為です。特に子どもの場合は,心身の成長や人格形成に重大な影響を与えます。まわりで見ている子も深く傷ついていることが多く,また,加害者も過去に被害経験がある子は少なくありません。教育現場におけるいじめ防止対策はとても重要であり,法律の機械的な適用ではなく,子どもに応じた教育的な配慮をしていく必要があります。
 他方で,管理強化や過重負担により教員が疲弊し,休職や退職に追い込まれています。一人ひとりの子どもに目の届く教育をするためには,教員を増やして少人数教育を実現することが必要です。
また,子ども達が互いの尊厳を認め合う価値観を育んでいくためには,自分の尊厳が十分尊重されていると実感することが不可欠です。教育の場でも,子ども達の人権を保障し,よりよい学校づくりへの意見を表明し参加する権利を認めることが大切です。

 2011年に大津市立中学校の生徒が自死した事件は,社会的に注目され,今回の法制化のきっかけとなりました。第三者調査委員会は,2013年1月に225頁の調査報告書をまとめ,大津市はこれをホームページ上において公表しました。報告書は,詳細な事実認定をし,学校や教育委員会の問題点を指摘しており,大きな教訓を示していると思います。
(弁護士 吉田 眞佐子)
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2013年6月21日
離婚あれこれ
 「子供を連れて奥さんが家を出て行った」という相談をよく聞きます。親権者を決める際に、その既成事実が優先され、そのままの状態が維持される(この場合、親権者は奥さんになる)という例が多くあります。(夫と)同じ空気を吸いたくないという気持ちが、離婚の動機だとすれば、別居したいということは、当たり前の要求かもしれません。子供を置いて家を出れば、逆に、親権者は相手方になることが多いということも事実です。離婚後、子供はいずれかで一方と生活をすることになるのは已むを得ないとしても、「過渡期」をどうすれば、要らぬトラブル(最大の被害者は子供ですが)を防ぐことが出来るかについて、なかなか良い案はありません。
 バブルの時代、離婚の財産分与と言えば、購入した不動産を売却して、ローン分を差し引いて残ったお金を折半するというケースがよくありました。しかし、今では、土地の値上がりもほとんどなく、建物の価値は低くなるので、オーバーローンになるケースがよくあります。財産が不動産だけの場合、借主が一方の場合、負債(オーバーローン分)は財産分与として、相手方に半分負担させることは出来ません(判決上)ので、大変なことになります。もちろん、他に財産があれば、その分は、合わせて算定しますし、調停ないし話し合いの場面では、そのことを考慮して解決している例が多くありますが。また、夫婦の収入を当てにしてローンを組んでいる場合も、離婚により予定が狂うことになります。
 これから不動産を購入される方は、離婚のことも、ちらっとで結構ですので、思い浮かべてはいかがでしょうか。
 また、離婚を考えている方は、早めに弁護士に相談されることを、お勧めします。
(弁護士 中尾 誠)
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2013年4月18日
保証債務について考える
 先日、自営業の方の破産事件を申し立てました。申立をした御主人には、金融機関から200万円〜2000万円の借金が数件ありました。最初の借入の際に奥さんが連帯保証しましたが、借用時の契約書は見当たらないものの最初の借入はほとんど残っておらず、奥さんの保証債務はほとんどないとのことでした。ところが、申立手続きの中で、奥さんの保証は根保証で、奥さんも2000万円余の保証債務が存することが判明しました。
 このように、保証債務には、根保証や身元保証、賃借債務の保証などのように、保証債務の期間や範囲が不明確で、保証人に過酷な結果をもたらすものがあります。そのうち、法律で責任の範囲を制限しているのは身元保証だけです。
 法務省の法制審議会民法部会は、2013年2月26日、債権法改正の中間試案をまとめました。中間試案には、中小企業が借金する時に、経営者の親族や知人の個人保証を禁止する規定が盛り込まれました。不十分な理解で保証人となった者と中小企業経営者との人間関係が経営悪化によって滅茶苦茶になるのを防止する効果や保証の有無でなく事業の将来性を考えて融資する姿勢に金融機関を誘導するという効果を狙ったもののようです。
 しかし、中小企業には担保となる資産がないところが多く、保証人規制が金融機関の貸し渋りを助長するという危惧や、経営に関与していない親族・知人を「経営者」として保証させる形の脱法の危険性が指摘されています。どの範囲で保証人資格を線引きするかが今後の焦点となりますが、保証債務には、範囲や期間など検討すべき課題が山積しているという状況です。
(弁護士 杉山 潔志)
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2012年6月12日
老朽化した「空き家」問題
  ・・・固定資産税,解体工事費用・・・
(相談1)Aさんは,両親が亡くなり空き家を相続したが,収入が減り,固定資産税を払えない。家土地の買い手はなく,行政に寄付を申し出たところ,「建物を解体し,更地にしたら寄付を受けつける」とのこと。しかし,建物解体費用は100万円以上かかり,Aさんは負担できない状況。

(相談2)老朽化がすすみ,倒壊の危険がある空き家。所有者Bさんは,費用のかかる解体工事や補修工事をする気がないが,近所の住民から苦情が来る。

 Aさんは,相続放棄をしたいと考えましたが,相続放棄の期間(相続開始を知ってから3か月間)を経過していました。価値があると思っていた不動産が固定資産税や解体費用のかかるマイナスの財産になるとは思いもよらなかったというケースです。
 Bさんは,更地にすると,固定資産税が上るからそのまま放置しているとのこと。しかし,倒壊などにより第三者に損害を与えた場合は,所有者は不法行為責任を負うこととなり,早期の対策が必要です。
 少子高齢化のすすむ日本の人口は減り続け,空き家はますます増加します。
 秋田県大仙市は,行政代執行により,危険な空き家を撤去する条例を施行し,2012年3月に全国初の代執行をしたとの報道がありました。長崎市は,空き家の解体費用を肩代わりするかわりに,所有者に土地ごと寄付してもらい,避難場所も兼ねた公園に整備。すると人口流出が止まらなかった地域に移り住む人が出てくるという効果が出たとのこと。空き家の対策及び有効活用で,街の活性化をはかる政策が求められています。
(弁護士 吉田 眞佐子)
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2012年2月7日
高齢者の財産管理について
 高齢者の財産が食い物にされているという相談が少なくありません。その高齢者が、財産管理を行うのに必要な能力を保持しているか、すでに失っているかがまず問題になります。
 財産管理能力があれば、それは食い物にされているのではなく、原則として援助であったり贈与であるということになります。いずれにしても、その高齢者が財産を渡したくないと思ってくれなければ、まわりの者が手助けすることができません。
 財産管理能力のない状態になっていれば、財産を守ることを任務とする成年後見人を家庭裁判所に選任してもらうことが必要です。四親等内の親族であれば成年後見人選任の申立てができます。財産管理能力の有無は、精神科などで成年後見用の診断書を書いてもらうことで確認することができます(裁判所のHPに書式が載っています)。この診断書を添えて申し立てるのが好ましいのですが、高齢者が食い物にしている者の支配管理下にあって、精神科に連れて行けない場合は、診断書なしでも申立ては受理されます。こうした紛争性の強いケースでは、親族からではなく弁護士など法律専門家が後見人に選任されることが多くなります。成年後見人が選任されれば、成年被後見人の財産は成年後見人の管理するところとなりますので、食い物にされることはなくなります。しかし、過去に食い物にされた財産を取り返すことまでは、容易ではないと考えたほうがよいようです。
 従って、おかしいと思ったら、早く動いてあげることが必要でしょう。
(弁護士 井関 佳法)
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2012年1月14日
自転車事故に気をつけて …自転車は自動車?
 「車両は、車道を通行しなければならない」と道交法17条で決められています。ご存知でしたか。例外的に、(1)自転車専用道などと指定された歩道、(2)13歳未満の子供、(3)70歳以上のお年寄り、(4)自転車の通行の安全を確保するためにやむ得ない場合、には歩道を運転することができます。車道を通ることが原則なのです。
 バス停などに人が大勢いるときに、ベルを鳴らしたりしていませんか。横に並んで歩いている学生さん達の真ん中を、速度を落とさずにすり抜けようとしたことはありませんか。
 そんな時に通行人にけがを負わせたら、原則として、あなたが悪いことになります。自転車と歩行者の間の事故は増え続けています。万一に備えて、保険に入っておくことも検討ください。自動車保険、火災保険などに付けられていることもありますので、確認をしてください。
 今日は新年会だから自動車は乗らず、自転車で家まで帰ろうとしたことはありませんか?もしも警察に捕まったら、自動車の飲酒運転と同じように刑罰が科せられます。法律では、2人乗りももちろん禁止されています(6歳未満の子供を乗せることは大丈夫ですが)。また、2台の自転車が並んで進むこともだめです。
 実態と合っていないですね。車道を通るときは、左側通行ですので、後ろから来る自動車は見えにくい状態です。また、自動車を運転している人も、自転車を邪魔者扱いにすることが多いので、正直言って、法律を守ることは大変です。
 警視庁は昨年10月に、「自転車は車道を走るのが原則」という方針を打ち出しましたが、自転車専用道路ないし専用レーンを作り、安心して自転車に乗ることができる道路の整備を行うことが先決だと思います。
(弁護士 中尾 誠)
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2011年7月7日
面接交渉権
 離婚する際、あるいはその後、財産分与・慰謝料・養育費という金銭問題とともに、未成年の子がいる場合には、親権者の指定と面接交渉権の問題が出てくる。面接交渉権とは、離婚後、子と一緒に暮らさない親が子と会う権利である。激しく争われることが少なくない。
 しかし、家庭裁判所のスタンスは、かなりはっきりしている。
 まず、面接交渉権を、子の権利として考えている。親の都合で離婚がなされ、一方の親と一緒に暮らせなくなっても、親子の関係に何らの影響はない。そして、親から大切に思われているということ自体が、子にとって重要である。その最も素直で自然な形は「親と会うこと」であると、家庭裁判所は考えている。
 従って、別に住んでいる親が、不貞をして出ていった親であっても、養育費を送ってこない親であっても、また、かつて他方の親や子に暴力を振ったり暴言を吐いたことがある親であっても、その程度にもよるが、原則として「子に会わせるべきだ」というところから出発して考えている。
 子と暮らしている親の立場では、「相手方の顔も見たくない」「養育費も支払わないのに」という声はよく分るが、家庭裁判所がこうしたスタンスで面接交渉の事件を処理していることは、念頭に置いておくべきであろう。
(弁護士 井関 佳法)
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2010年12月28日
事故の現場検証
 人身事故があると、現場検証が行われて実況見分調書が作成される。この実況見分調書は、事故の原因、過失割合等を明らかにする上で重要な証拠、しばしば決定的な証拠となる。
 実況見分調書上には、「加害者はA点で初めて被害者がa点を走行するのを発見した、加害者はB点でブレーキをかけその時被害者はb点を走行しており、×点で衝突した、そして加害者はC点に停車し被害者はc点に転倒した状態で停車した」というように、現場図面上に双方の動きが記入される。裁判官は、この実況見分調書をもとに、各点間の距離や所要時間などを計算して「緻密に」責任を究明していく。
 実際は、「あっ」と思ったら、あるいはせいぜい「あっー」と思ったらドッカーンである。「あっ」と思った場所やぶつかった場所が何処なのかは、そんなに簡単に分かるものではない。
 しかも、現場検証は交通をストップしておこなわれるわけではない。事故当事者は、再現走行車両に乗せてもらって各点が何処なのかを確認させてもらえるわけではない。車がビュンビュン走行する道路の脇で、歩行者目線でそれらの場所を確認させられるだけである。しかし、高速で走行する運転席からの視野と道路脇の歩行者視界は必ずしも同じではない。
 従って、現場検証が後日行われる場合には、予め事故現場を車で走行してみて事故時の記憶を喚起してみるべきである。事故直後に現場検証が行われる場合には、慎重に、よくよく思い出して説明すべきである。事故を起こした負い目から、警察官に言われるままに各点を決めてはならない。
 さらに問題なのは、軽微な事故の場合などには、加害者の立ち会いだけで、被害者の立ち会いなしで、現場検証が済まされて事件が処理されることがある。交通事故の当事者となった場合には、必ず現場検証に立ち会わせてもらって、事故状況の説明をさせてもらわなければならない。すでに現場検証が終わっている場合でも、再度の実施が可能である。
(弁護士  井関 佳法)
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2010年5月27日
成年後見制度に注目!
 成年後見人ってご存じですか?
 成年後見人は、ご自分で財産管理や施設入所契約等の契約ができなくなった方を保護し、支援するための仕事をします。高齢や病気、事故などの原因で、成年後見の対象となる方が沢山おられ、増えているように思われます。
 これまでは、ご親族や周りの方が、善意で、ご本人の財産管理をしていました。しかし、成年後見の制度ができたこともあり、銀行がご本人のご意志をきちんと確認するようになるなど、社会の対応も変化してこれまでのやり方が通用しにくくなってきています。さらに、財産が食い物にされるなど、不適正な財産管理がされているケースも少なくありません。
 後見人は、ご親族等身近な方から選任されることが多いのですが、紛争性が強いケースでは、私たち弁護士など専門職から選任されることとなります。後見人は、ご本人の看護や介護、預貯金その他の財産管理、場合によっては訴訟をすることもあります。
 申し立ては、ご本人の4親等内の親族が行うこととされていますが、検察官や市長にも申し立てる権利が認められています。診断書で判断できれば費用はほとんどかかりませんが、専門医の鑑定が必要な場合は申立人に鑑定費用がかかります(10〜15万円程度)。
 判断能力のあるうちに、契約で後見業務を依頼しておく任意後見契約も活用されるべきでしょう。気になるケースが身近にある方は、是非一度ご相談下さい。
(弁護士 井関佳法)
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