京都南法律事務所

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台風被害 ~賠償責任と保険~

弁護士 吉田眞佐子
 本年9月4日、台風21号により近畿地方は記録的な暴風、高潮、豪雨となりました。特に各地で観測史上最高を記録した猛烈な風により、建物が壊れたり木が倒れるなどし、停電戸数も多く、甚大な被害となりました。交通機関は計画運休実施を早い段階で公表し、休業した会社や店舗が数多くありました。
 台風で近所の屋根瓦が吹き飛び、自宅の壁が壊れた、自動車を破損したとの相談が多数あります。屋根瓦は建物の一部ですので、「設置ないし保存に瑕疵」があれば、民法上の損害賠償責任を負います(民法717条)。しかし、一般に予想されていなかった強風による被害は「自然災害で生じた不可抗力の事故」であり、賠償責任はないとするのが裁判所の考え方です。なお、ベランダの植木鉢など地面に固着していないものが飛んで他人に損害を与えた場合は、予防や回避が通常可能とされて、賠償責任が認められる場合があります。火災保険や自動車保険に「個人賠償責任保険」の特約をつけている場合は、支払い対象の確認のため保険会社にご連絡下さい。
 自分の建物・家財に掛けている火災保険には、風災による損害も対象とするものが多いです。保険会社に速やかに連絡し、写真を撮り、業者の見積りをとって請求して下さい。
 激しい台風の中で、社員に通常の運送業務をさせ、トラックが横転して死傷した場合、労災事故になるとともに、会社の安全配慮義務違反による賠償責任を問われる可能性があります。最近の気象情報の精度は上っており、空振りをおそれず、早めに業務の中止等を判断することが求められます。
(2018年11月)

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