京都南法律事務所

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関わった事件

介護中に起きた事故の責任

弁護士 井関佳法
 介護中に事故が起きた場合、責任はどうなるでしょうか。介護を受ける人も、介護職で働く人も増えています、一緒に考えてみましょう。
 事故の責任一般について判例は、事故が予想でき、回避できたのに、必要な対応がなされていなかった場合に過失があったとして責任を認めています。介護事故の場合も、事故が予想できたかどうかがポイントとなります。
 最近、デイサービス送迎中の転倒事故を担当しました。転倒事故は、高齢者が一人で歩け、歩こうとするが、歩行が不安定な場合に発生しやすい事故です。依頼者の方は、脳梗塞で半身にマヒがありましたが、室内では一人で移動できました。判例から見ても、介護者側の責任が認められるべきケースで、話し合いで解決できました。
 介護施設入所者がおやつのドーナツを食べた直後に亡くなった事故について、介護者が刑事責任を追及された裁判がありました(特養あずみの里事件)。2019年3月の長野地裁松本支部は、死因を窒息死とし、おやつが変更されてドーナツになったのに、変更を知らないままドーナツを提供したことが過失だとして有罪としました。しかし、介護を萎縮させると批判の声が上がり、東京高裁は、2020年7月、窒息死でないとして逆転無罪を言い渡しました。松本支部判決は、死因を誤っていただけでなく、亡くなった方に摂食誤嚥障害はなく、おやつの変更は事故の予想と関係しないのに、おやつの変更を知らなかったことで過失を構成したことにも無理がありました。
(2021年11月)

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