二硫化炭素中毒症患者の死亡について、労災認定!
弁護士 中尾 誠
◇死亡原因は「不詳」
Nさんは、ユニチカ宇治工場のレーヨン製造業務に従事する中で、長期間、低濃度の二硫化炭素に暴露し、45歳の時に脳梗塞を発症し、1994年に、労災認定を受けました。施設に入所している中で、2023年3月に亡くなられました。当初、死亡原因は「不詳」とされ、その後の司法解剖の結果、「嘔吐物吸引による窒息」とされましたが、嘔吐物吸引の原因は「不詳」ということでした。
◇死亡原因は、二硫化炭素中毒症として、労災申請
Nさんが亡くなられた年齢は82歳でした。胃からの嘔吐物が気道に詰まりその結果窒息死に至るということは、高齢者の死亡原因として、よくある例と言えます。しかし、二硫化炭素中毒症に罹患していなければ、亡くならなかったのではないかという遺族の方の思いを受けて、2023年10月に、京都南労働基準監督署宛に、労災申請をしました。
◇監督署段階での労災認定
Nさんは、生前、あさくら診療所(宇治市)に通院しており、継続的にNさんの診察をされていた池野文昭先生に意見書を書いていただきました。「嘔吐物に対する咳嗽反射での喀出が出来ず窒息に至った原因としては、呼吸筋力の低下だけでなく慢性二硫化炭素中毒症によって生じた脳梗塞によって脳幹部を介する神経反射の機能が著名に低下していたためと判断出来ます。」(意見書より)との意見が認められ、2024年6月に労災認定されました。
なお、担当は、杉山潔志弁護士と中尾誠です。
(2024年10月)