憲法を知ろう
労働者とは誰か(27条2項・28条)
ウーバー配達員は「労働者」
さる11月25日に東京都労働委員会は、「ウーバーイーツ」の運営会社に対し、配達員の労働組合との団体交渉に応じるよう救済命令を出しました。「ギグワーカー」を労働者と認めた初めての判断です。キグワーカーとは、一般的に「インターネット経由で単発の仕事を請け負う人」のことで、インターネットの普及、及び、コロナ下の中で、増えてきており、注目すべき救済命令です。
これまでも、トラック持込運転手、一人親方などが「労働者」かどうかについて、争われてきました。
なぜ、争うのか
配達員が労働者ということになれば、仕事中にケガをすれば労災補償が受けられますし、社会保険の適用も受けることができます。また、労働条件について、運営会社と団体交渉の場で、協議することもできます(協議に応じない、ないし、不誠実にしか対応しない場合は、使用者に制裁が科せられます)。しかし、労働者でないとすれば、両者の関係は請負関係であり、そのような「保護」はありません。「労働者」であるかどうかで大きな違いがあります。
労働者の権利は、憲法上の権利
「賃金、就業時間、休息、その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」(憲法27条2項)とされています。この規定に基づいて、労働基準法、最低賃金法などの労働者保護のための法律が定められています。使用者は、法律で定められた基準以下の条件で、労働者を働かせてはいけないことになっているのです。また、憲法28条の労働基本権の保障の狙いは、「憲法25条に定めるいわゆる生存権の保障を基本理念とし、経済的劣位に立つ勤労者に対して実質的な自由と平等とを確保するための手段として、その団結権、団体交渉権、争議権等を保障しようとするものである」(最高裁昭和41年10月26日大法廷判決・全逓中郵事件)とされています。
憲法には、労働者(勤労者)に関する規定はありますが、女性、子供、自営業者などに関する規定はありません。その意味で、「労働者」は、憲法上、特別の位置を占めているわけです。
(弁護士 中尾 誠・2022年12月記)