京都南法律事務所

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憲法を知ろう

臨時国会開催要求(憲法53条)

国会は国権の最高機関
 憲法は、国の三権として、国会(第4章)、内閣(第5章)、司法(第6章)を定め、立法権・行政権・司法権をそれぞれ担当させるとともに、三権を分立させて互いに抑制させ均衡を保たせることで権力の濫用・暴走を防ごうとしています。国会は、主権者国民を代表する選挙された議員で組織されていることから(43条)、三権の中の最高機関と定められています(41条)。
国会の権能・・・立法と行政権チェック
 憲法は、国会が行うべきこととして、立法をあげ(41条)、特に一章を設けて財政処理についても国会の議決に基づいておこなわなければならないと定めています(第7章)。これが国会のメインの仕事になります。
 同時に、国政、特に内閣の行政権行使をチェックする仕事があって、そのために閣僚は国会に出席して答弁・説明する義務が課され(63条)、国会には国政調査権という権限も付与されています(62条)。
通常国会と臨時国会
 憲法は、国会の開催について、1年に1回、一般的には「通常国会」と呼ばれている「常会」を開くと定めており(52条)、それ以外に「臨時国会」と呼ばれている「臨時会」を開くことができると定めています。内閣は、必要があると思えばいつでも臨時国会を召集することができ、又、いずれかの議院の4分の1以上の議員の要求があれば、内閣は臨時国会を召集しなければならないとされています。

憲法53条(臨時会)  内閣は、国会の臨時会の召集を決定することが出来る。いずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。

 通常国会は、1月に召集されて会期は原則として150日間(約5か月間)とされていますが、閉会中であっても、立法権行使の必要か、行政チェックの必要かにかかわらず、迅速柔軟に国会が開催できるように制度設計されているのです。
安倍・菅内閣の臨時国会召集要求の無視
 2017年6月22日、当時の衆参両議院の議員が、憲法53条の後段に基づいて内閣に臨時会の召集を求めました。森友学園・加計学園問題で追及を受けていた安倍首相が国会での追及を嫌って通常国会を閉会してしまったため、これらの問題の十分な審議を求めて53条に基づく臨時国会の召集を要求したのですが、安倍内閣は臨時会を召集しませんでした。
 2021年7月16日、立憲・共産・国民・社民の各党衆院議員は、臨時会の召集を求めました。自民党政権のワクチン接種を含めたコロナ対応の混迷の追及、困窮を極める国民への抜本的支援のための補正予算の審議を求めての要求ですが、菅内閣も臨時会の召集に応じていません。
臨時国会召集要求無視は53条違反
 安倍内閣と菅内閣の上記臨時国会召集義務の不履行は、憲法53条の明文に違反しているだけでなく、53条の趣旨にも違反しています。
 即ち、この規定は、主権者国民の代表機関である国会が、通常国会会期以外の時期であっても、立法権や行政監視権限を、必要な時にいつでも行使できるように定められたもので、国民主権原理に照らしても、三権分立の要請からしても重要な制度です。時の内閣の「いやなら召集しなくてよい」という恣意的な行使を許すものではありません。
 2017年の召集義務不履行に対しては、沖縄・東京・沖縄で違憲訴訟が提起されています。行政寄りと批判されることの多い裁判所ですが、沖縄地裁は、憲法53条は内閣に法的義務を課したもので、召集しないという内閣の裁量権は狭いこと、裁判所の審査対象となることまで認める判決を下しました。岡山地裁でも同旨の判決が出されています。結論は棄却判決でしたが、実質的には違憲の判断が下されたとも評価できる、踏み込んだ判断であり、注目されています。
 今年7月の臨時国会召集要求には、2017年に勝るとも劣らない必要性がありますから、菅内閣の対応は、国会軽視の許されないもので、広く国民の支持するところと考えられます。国会開催を求める声を引き続き上げることが大切だと思われます。
(東京弁護士会の会長声明参照)
(弁護士 井関佳法・2021年9月記)
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