京都南法律事務所

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憲法を知ろう

裁判所の役割(76条)

三権分立
 権力が一つの機関に集中すると濫用されるため、国の権力を立法権・行政権・司法権の三つに分け、互いに抑制し合わせ、均衡を保つことによって権力の濫用を防ぎ、もって、国民の権利と自由を保障しようとする仕組みを三権分立と言います。日本国憲法もこの考え方を採用しています。
 (最高裁HP・裁判所NAVI・P4参照)
司法消極主義
 三権分立が上記のとおりだとすると、裁判所は大活躍するイメージになります。国会が憲法違反の法律を作れば、違憲判決を出し、行政が憲法や法律に違反する命令や処分をすれば、違憲・違法判決を出す。
 ところが、日本の裁判所は、自らの立法・行政のチェック機能を消極的に行使すると言っています。国会も内閣も民主的な基盤を持つが、裁判所は民主的基盤を持っていないからだと言います。一つの理屈ではありますが、そのため裁判所は、国会・行政の追認機関に堕してしまっていると批判されてきました。
生活保護の引下訴訟で画期的判決
 新自由主義の下で格差と貧国が広がり、コロナ禍で特に貧困問題が深刻となっています。そのような中で、大阪地方裁判所は2021年2月、生活保護基準引き下げを違法と断じて取り消す、画期的な判決を下しました。
 取消しを認めた理由は、生活保護基準引き下げを決める過程に過誤、欠落があったということでした。当然に調べるべき資料を調査していない、物価データを明らかに不合理に解析している、聴くべき専門家の意見を聴いていない、だから違法だと判断したのです。「判断過程統制論」と言われる判断の仕方です。当たり前のことができていない、だから違法だと言っているわけですから、行政にとって大変恥ずかしい判決だと思います。
今必要な、裁判所の積極的姿勢
 ただ、こうした行政のありようは、今回の生活保護基準の引下にだけ見られるわけではありません。例えば、今、目の前で繰り広げられているコロナ禍への政府対応でも、同じ問題が繰り返されています。残念ながら、行政、立法の劣化が進んでいます。
 日本の裁判所は、上記のとおり、選挙で選ばれる国会と、その国会で選ばれる内閣(行政)に対しては、遠慮してきました。しかし、そうも言っていられない状況となっています。裁判所には、国民の権利の実現ため、積極的な役割が求められています。
(弁護士 井関佳法・2021年7月記)
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