京都南法律事務所

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国に対する「住民訴訟」制度の創設(83条)

国のお金の大盤振る舞い
 岸田首相は2月の衆院予算委員会で、米国製の長距離巡航ミサイル・トマホーク400発を購入する予定だと述べました。購入金額は、約5.2億円/1発で、米海軍省が購入する値段(約2.7億円)の2倍近くの単価となります。無駄遣いという表現では言い表せないものです。
 また、昨年11月、会計検査院は、官庁や政府出資法人を調べた2020年度決算検査報告の中で、「アベノ(安倍の)マスク」について、22年3月時点で約8272万枚(約115.1億相当)が倉庫で保管されていると指摘しています。このことに対する、元安倍首相の責任はないのでしょうか。
 この国には無尽蔵にお金があるかのような大判振る舞いが続いています。自分のお金であれば、担当者は、このような使い方はしないのではないでしょうか。また、国の借金である国債が1000兆円にもなっているなか、国の財務は適正に執行される必要があります。
 このようなことを思っている時、国に対してなぜ、地方公共団体における「住民訴訟」のような制度がないのか、疑問に思っています。
住民訴訟とは
 「住民訴訟」とは、「住民からの請求に基づいて、地方公共団体の執行機関又は職員の行う違法・不当な行為等の発生を防止し、又はこれらによって生じる損害の賠償等を求めることを通じて、地方公共団体の財務の適正を確保し、住民全体の利益を保護することを目的とする制度」であり、「地方自治の本旨に基づく住民参政の一環(参政権の一種)である」とされています。(最判昭和53年3月30日)。
 この制度を活用したオンブズマン活動によって、地方公共団体における財務に関する違法・不正が正され、地方公共団体で働く公務員が、緊張感をもって、法律・条例など法規に基づいて職務を行うことに対する「圧力」となっています。
国に対する類似の制度の導入を
 上記の最高裁判例の「住民」を「国民」に、「地方公共団体」を「国」に読み替えることに何の違和感もありません。それどころか、その財政規模(国:114兆円、京都府1兆円)からみても、国に対する影響の方が格段に大きいものがあります。
 この点に関して、日弁連は、「公金検査請求訴訟制度の提言」(2005年6月16日)を出し、「問題があると思われる国の財務行為について、国民が、会計検査院に対して監査を請求し、会計検査院の対応が不十分なときは、国などを被告として必要な措置を取るよう請求する訴訟を提起することができる制度」の創設を提言しています。  また、全国市民オンブズマンも2002年の栃木大会において「国レベルでの住民訴訟の創設を求める決議」をあげ、創設に向けての運動を行っています。  私たちの納めた税金が有効に無駄なく使われるため、1日も早い制度の実現が望まれます。
(弁護士 中尾 誠・2023年4月記)
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