憲法を知ろう
皇室財産・皇室費用(88条)
皇室財産はすべて国に属する
敗戦当時、皇室は、三井、三菱、住友などの財閥をしのぐ資産を有しており、GHQは、皇室を財閥の一種とみなしました。現憲法の制定により、「すべて皇室財産は、国に属する」ことになりました(88条)。しかし、皇室は、まったく財産を持てなくなったわけではありません。「三種の神器」をはじめとする皇室にゆかりの深い品々などについては、「皇位とともに伝わるべき由緒ある物」として「皇位とともに、皇嗣が、これを受ける」(皇室経済法7条)ことになっているほか、皇居、修学院離宮、正倉院、御料牧場ほかの土地・建物などは、「国において皇室の用に供し,又は供するものと決定したもの」(国有財産法3条2項3号)として、専ら皇室が使用するもの(皇室用財産)となっています。
皇室関係費の額
皇室に関係する費用として、次のものがあります(皇室経済法3~6条ほか)。
- 皇室費
- 内廷費(天皇家の日常の費用):3億2400万円、宮廷費(皇室の公式活動費):95億5381万円、 皇族費(宮家の歳費):2億6372万円
- 宮内庁費
- 宮内庁運営のための人件費など:119億5677万円
- 皇室警察本部費
- 皇族の護衛および皇居などの警備のための費用:82億9606万円
年間の総額は、約303億円となります(2023年度)。ちなみに、同年度の一般会計予算額(歳出額)は、112兆717億円でしたので、全体の金額からすればそれほど多額と言えないかもしれませんが、天皇という制度が必要ないとすれば(私はその考えですが)、要らない費用です。
天皇制と国民
天皇(特に、平成天皇)が、「日本国の象徴」として、その役割(国家統合、国民統合)を担ってきたことを否定するつもりはありません。そのために、国民(1億2050万人)1人当たり252円/毎年を負担することは、ある意味では安いことかもしれません。しかし、本来は、主権者たる国民が工夫し、担うべきものであり、その意味で、国民は「公民としての自立」を自ら妨げていると言えるのではないでしょうか。
(弁護士 中尾 誠・2024年11月記)