京都南法律事務所 憲法を知ろう
憲法を知ろう
核兵器禁止条約と憲法9条(9条))

核兵器禁止条約
 核兵器は壊滅的で非人道的な結末を招く、核兵器を使わせない唯一の方法は核兵器の廃絶しかないとして、核兵器の使用・使用の威嚇・保持・実験・製造等を広く違法と断じて禁止する核兵器禁止条約が、2017年(平成29年)7月7日、国連加盟国の6割を超える122か国の賛成で採択され、2021年(令和3年)1月22日、50か国が批准して発効し、国際法上、核兵器が違法な存在であることが確認されました。2017年12月には「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)が条約採択への貢献を理由にノーベル平和賞を受賞しました。
 日本政府は、戦争による唯一の被爆国であるにもかかわらず、核兵器禁止条約を批准するつもりがないと公言しており、条約採択前年の2016年4月のことですが「憲法9条は、一切の核兵器の保有及び使用を禁止しているものではない」と閣議決定もしています。

憲法9条と核兵器
 憲法9条は、核兵器にどう向き合っているのでしょうか?
 憲法9条以下のとおり定めています。
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
A 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
 この憲法が制定されたのは、1946年11月3日(公布)で、1945年8月6日と9日の広島・長崎への原爆投下のわずか1年余り後でした。
 1946年1月24日、幣原喜重郎首相はマッカーサー連合国最高司令官と会って、日本の再軍備等について話をしました。マッカーサーは、原爆投下による惨状について「市民は、一瞬のうちに地獄絵図のうちに死んでいった。」(回顧録)と語っていますが、この日の幣原との話し合いについて、「日本人は、世界中のどこの誰にもまして原子戦争がどんなものだか了解しています。・・・彼らは自分の意見でその憲法の中に戦争放棄条項を書き込みました。・・・首相が私の所に来て長い間考えた末、この問題に対する唯一の解決策は戦争をなくすことだと信じますと言ったのです」と述べています(1951年5月5日、上院軍事外交合同委員会)。
 その幣原は、憲法制定議会で以下のとおり答弁しました。「破壊的武器の発明、発見がこの勢いを持って進むならば、次回の世界大戦は一挙にして人類を木っ端みじんに粉砕する」、「文明と戦争とは結局両立し得ない。文明が速やかに戦争を全滅しなければ、戦争がまず文明を全滅することになる」(1946年8月27日)、「原子爆弾というものが発見されただけでも、或戦争論者に対して、よほど再考を促すことになっている」(同年8月30日)。
 1946年1月24日に幣原とマッカーサーは核戦争を起こしてはならないと熱く語ったようです。その思いが憲法9条に結実したとみて間違いないでしょう。即ち、憲法9条の原点は、核戦争の阻止、核兵器が二度と使われないようにすることにあったのだと思います。

憲法9条の原点
 その後、マッカーサーも日本政府も「変節」し、9条の意味するところも曲げられてきました。
 しかし、日本の被ばく者をはじめ世界中の反核を願う運動が、70年余を経て、核兵器禁止条約を作りました。日本は核兵器禁止条約を批准していませんが、その内容は人道と正義に深くかかわっており、ジェノサイド・奴隷制・拷問などに関する条約と同様、批准していない国も拘束するものと考えるべきでしょう。核兵器保有国も、核兵器禁止条約を無視することはできなくなるでしょう。
 核兵器禁止条約発効を受けて、私たちも、憲法9条の原点に立ち返って考えることが必要だと思われます。
(弁護士 井関佳法・2021年11月記)

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