井関佳法 Essay
本は本屋さんで買いますか?
2019年5月
「餅は餅屋」ですが、必ずしも「本は本屋」ではなくなりました。アマゾンなどのネット派が増え、私も少し前からネット派になりました。しかし、本屋にも足を運びたいものです。先日、少し時間があり本屋に入って、前から欲しかった浅田次郎の「天子蒙塵」第1巻と、ふと目についた「アンダークラス―新たな下層階級の出現」橋本健二著(ちくま新書)を買いました。
急激に増える非正規労働者の供給源、貧困率の高さ、幸福度・満足度等意識動向を、アンケート調査を基に見事に分析してくれています。
自民党は、アンダークラスを含めて生活に幸福感・満足感を持つ人たちを広く組織しているのに対して、他のどの政党も、幸福感・満足感を持たないアンダークラスを組織できていません。幹部サラリーマンや専門職、中小零細企業主、専業主婦では、所得再配分政策に賛成の人は憲法9条改正に反対していますが、正規労働者では、所得再配分政策に賛成の人が、憲法9条改正にも賛成する傾向が見られ、アンダークラスの場合は、所得再配分政策への賛否と憲法9条への賛否に関係性が見られません。
著者は、アンダークラスのための政策実現の重要性、そしてアンダークラスの意識動向を政治的にくみ上げる工夫の必要性を指摘しています。所得再配分政策と平和主義などリベラル政策が、必ずしも私たちが考えている関係になっていない実態には注意が必要でしょう。
そして、本屋にも行かねばと思いました。