杉山潔志 Essay
「平成」から「令和」へ
2019年5月
本年は、関西地方では3月1日に春一番が吹き、3月6日に啓蟄を迎えました。春には桜が咲き、若葉が芽吹き、動物も新しい命を誕生させる準備をします。4月には入学式や入社式が行われ、人々の営みも新しい年度を迎え、私たちに新たな期待と決意をもたらします。今上天皇は4月30日に退位し、5月1日に徳仁皇太子が新天皇に即位します。元号は「平成」から「令和」となります。春に新天皇が即位するのは、新しい時代の到来とそれへの国民の期待感を意図したものでしょうか。
改元の根拠となる元号法は1条だけで、1項で「元号は、政令で定める。」、2項で「元号は、皇位の承継があった場合に限り改める。」と定めています。公文書では元号が使用されていますが、法案審議の際には、元号の使用を国民に強制するものではないとの政府答弁がなされています。
元号は、皇帝が時をも支配するという思想に基づき、中国の前漢の武帝の治世に使用されるようになったものです。この考え方がもたらされ、日本でも元号が用いられるようになりました。
日時や年月に共通の物指しがないと社会は成り立ちませんが、皇帝による時の支配という思想は民主主義社会にはそぐいません。そのことを頭に置いて新しい元号を迎えたいものです。