京都南法律事務所

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吉田眞佐子 Essay

DV(ドメスティック・バイオレンス)と裁判
2007年12月
 Aさんは夫から暴力的に支配され、自分が悪いと思い込み抑うつ状態になっていた。周囲の援助によりようやく夫側に問題があることに気づいて別居。離婚裁判で、夫はDVを完全否認。彼女は病院にはほとんど行っておらず、昔のカルテは保存期間経過により廃棄処分され診断書がとれなかった。しかし夫の本人尋問で矛盾が明らかになり、DVが認定された。Aさんは「裁判で言い分を認めてもらえたことも嬉しいが、それ以上に、裁判をする中でBさん(カウンセラー)と出会えたことが最大の幸せ」と言い、私にカウンセリングの力を教えてくれた。
 DV夫は妻子への執着が激しく、調停では決着せずに離婚訴訟になることが少なくない。離婚裁判でのDVについてのやり取りは、被害者に大変な苦痛を与える。事実を否認するだけでなく詳細な陳述書を出して妻を執拗に強烈に非難してくる夫。「嘘ばかり。悔しい」「相手は裁判でも私を苦しめ支配しようとしている」と身体を震わせ涙を流す妻。反論書作成のため、記憶に蓋をしてきた暴力・暴言による支配を「思い出す」作業により再び抑うつ的になる人もいる。DVが認定されても、裁判での慰謝料金額はそれ程高いものではないのが現実だ。
 夫の妻に対するDV支配は、一種の「依存症」と感じる。DV夫の生い立ちを尋ねると「本当はかわいそうな人なのです」という妻は多い。子どもがいる場合、離婚により夫婦は他人になっても親子関係は続く。離婚事件を契機に「底つき感」をもった加害者自身が、カウンセリングや自助グループ等につながり「DV依存症」から回復していく道筋がもっと広く大きくなればと思う。

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