吉田眞佐子 Essay
離婚後「共同親権」と子どもの人権
2024年4月
離婚後の子どもの養育制度を大幅に見直す民法改定案が、本年4月16日に衆議院で可決され、今国会で成立する見込みです(4月17日現在)。現行民法は、離婚後は父母の一方の単独親権ですが、改定案では、離婚の際に共同親権か単独親権かを選択し、合意できない場合は家庭裁判所が判断するとしています。共同親権の場合でも、例外的に「子の利益のために急迫の事情があるとき」「日常行為」は単独行使できるとされますが、その範囲は明確ではありません。
離婚事件の当事者や実務家の中では、教育・医療・居所・財産管理など子どもに関する重要事項について別居親との共同決定が必要とされると、同居親(多くの場合は母)が別居親との関わりを強制されたり支配される場合があること、別居親に拒否されると法的手続等の負担が生じることなどから、むしろ、子どもの利益に反するとの懸念により、拙速な導入に反対する声がひろがっています。
オーストラリアでは「共同の親責任」制度があり、政府の資金を受ける民間団体が相談・調整等をしています。暴力や虐待を伴う家族では共同の養育を推奨されませんが、家庭内という密室での「暴力(DV)」の認定は難しいです。また、一部の親の裁判所命令への不服申立てや同居親への裁判を乱発し長引かせるなどの弊害が問題となり、2023年に、共同の養育にこだわらず「子及び世話をする者の安全面を重視してそれぞれの家族の実情を踏まえて子どもの利益を図る」ものに改定されました。
選択的夫婦別姓制度の法制化がされず、家父長的な家族観が根強く残る日本での離婚後共同親権の導入は、慎重な検討が必要であり、親子への支援機関の充実及び子どもの人権、意見表明権保障のための十分な体制づくりが不可欠と思います。