不動産 Q A
アパートの明け渡し
私たちは2階建てアパート(部屋は8室)の住人で、現在、空き部屋が3室あり、5世帯が住んでいます。最近、家主が、建物が古いので建て替えたいから全員明渡してほしいと内容証明郵便を送ってきました。私たちは応じなければならないのでしょうか。
建物の朽廃
建物が朽廃している時は、賃貸借契約は当然終了となりますが、普通に生活ができているのであれば、朽廃に至っていることはないと思われます。
建物の朽廃に至っていない場合であっても、「耐震強度が不足し、危険な建物となっている」ことを理由とする場合もあるでしょう。しかし、耐震強度の不足が事実としても、それだけで明け渡しが認められる訳ではありません。ただし、耐震不足が次項で説明する正当事由のところで検討される場合があります。
皆さんは、賃貸借契約の賃借人として借地借家法の保護が受けられ、家主の解約申入れは正当事由がなければ認められません。この正当事由は、相当強い理由がないと簡単には認められません。
この正当事由の判断にあたっては、
- (1)家主および賃借人が建物の使用を必要とする事情
- (2)賃貸借に関する従前の経過
- (3)建物の利用状況
- (4)建物の現況
- (5)家主が明渡しの条件として申し出た立退料の額等を考慮して判断する
旨借地借家法(28条)で定められています。本件との関係で問題になるのは(4)が中心になります。
大家には修繕義務がありますから、耐震不足の場合、原則として、大家に耐震補強工事を行なうよう求めることとなります。ただし、耐震不足は、その程度や、耐震補強工事にかかる費用等が、上記(4)の建物の現況に関する事情として、(1)ないし(3)や(5)とともに、正当事由の有無を判断するための一事情とされることがあり、これらが総合考慮されて、正当事由の有無が判断されることになります。
また、(5)の立退料の金額によっても、結論が変わってくることについても注意をしてください。
家主が明け渡しを強く主張して賃料を受領しない時は、賃借人は賃料を供託しておく必要があります。
家主は、賃借人に対して個別に明け渡し交渉をしてくることが多いですが、賃借人の皆さんが共同歩調をとって、対応したほうが、解約の正当事由が認められそうな場合でも、有利な条件で解決できます。
家主と改築後の建物に入居するという約束ができた場合でも、家主がこれに違反して、第三者を入居させてしまうと、その人を立退かすことはできません。したがって改築後の建物に入居する契約を結ぶときは、予め、新しい条件を具体的に定め、且つ、家主が約束に違反して第三者を入居させた場合の違約金を決めておくなどを書面で作成しておくことが大事です。