不動産 Q A
賃貸マンションの修繕義務と敷金
賃貸マンションを引き払い大家さんに敷金の請求をしたところ、畳・ふすま・壁紙の張り替えと風呂の修理に37万円必要で、預かっている敷金20万円では不足だから、あと17万円支払えと言われました。どうしたらよいでしょうか?
最近こうしたトラブルが急増しています
敷金は、賃借人が賃貸人に預けるお金であり、家賃滞納や部屋の設備を壊したときの担保とされ、明渡しと引換えに返還されるものです。
ところで大家さんはどういう原因でどういう状態になっている畳、ふすま、壁紙について張り替えると言い、風呂の修理をすると言っているのでしょうか。普通に使っていたが時間が経ったことにより日焼けしたとか黄ばんできたとか、すり切れてきたのか、それとも部屋でプロレスごっこをしていて蹴破られたとか、寝タバコでこげ目がついたのか。普通に使っていたが時間が経ったことにより風呂釜がうまく動かなくなったとか、風呂のタイルがはがれてしまったのか、それとも風呂の空だきで風呂釜をダメにしたとか重いものを落としたためホーローの風呂おけにひびが入ってしまったのか。前者であれば使用の対価として賃料が支払われていることで当然カバーされている範囲に入るか、賃貸人の修繕義務の対象となります。
あなたの大家さんは何を根拠に「畳・ふすま・壁紙の張り替えや風呂釜の修理」にかかる費用を請求しているのでしょうか。
賃貸借契約書の中には、賃借人の修繕義務を定めているものがあります。しかし、たとえこうした規定があっても、それは本来賃貸人にある修繕義務を免除するだけの意味であり賃借人の積極的な修繕義務まで定めたものではないと考えられています。
また賃借人の原状回復義務を理由とされる場合もあるでしょう。しかし、賃借人の原状回復義務とは、たんすなど部屋に入れていたものを搬出したり、棚を付けた場合に取り外したりすることでありそれ以上ではありません。
更に賃貸契約書の中には、賃貸物件が「毀損・滅失・汚損」した場合に賃借人の故意過失を問わずに賃借人の損害賠償義務があるかのような記載がなされている場合があります。しかしたとえこうした規定があっても、通常の使用による損耗・汚損は含まないというのが判例の考え方です。
したがって、通常の使用とはいえない使用による傷や汚れがある場合はともかく、大家さんの請求は不当です。
大家さんの支払い請求を拒否し、敷金の返還を請求してください。大家さんがこれに応じない場合には法的手続きの検討も必要でしょう。