相続・遺言 Q A
遺産分けと生命保険金
先日40歳になる息子が亡くなりました。結婚はしていたのですが子どもはいません。息子は受取人を妻として生命保険をかけていました。息子の遺産分けに際して、妻の受けとった生命保険金は考慮していいのでしょうか。
ご質問の場合、法定相続分は、妻3分の2、父母各6分の1です。
遺産分けにおいて生命保険金の扱いで意見の分かれることがあります。ご質問の場合、生命保険金は遺産かという形で問題となりますが、判例上、保険金は保険契約によって取得したものであり、遺産ではないと考えられています。しかし、保険金の受取人を相続人のうちの特定の者として指定されている場合は、こうした考え方に基づく処理では極端な不公平が生じる場合があるとして、それを考慮して取り分を決めるべきだという判決があります。考慮すべき範囲としては、保険金全額とするもの、払込保険料の予定払込保険料に占める割合を乗じた金額とするものなどに分かれています。(但し、生命保険金は相続税の関係では相続財産とみなされて課税されますので注意してください。)
仮に息子さん(被保険者)より先に奥さん(受取人)が亡くなったような場合は、息子さん(保険契約者)はさらに受取人を指定することができるとされています。
息子さんがこの指定をしないで死亡した場合、受取人(奥さん)が死亡した時点の受取人の相続人(即ち、奥さんのご両親が健在ならご両親、亡くなっていれば奥さんのご兄弟)となるとされています。
なお、生命保険金の受取人欄の記載を「相続人」としていた場合は、保険金請求権発生当時(保険契約締結当時ではなく)の相続人が受取人となります。
息子が亡くなってから、息子に借金があり、息子のプラスの遺産を大幅に上回っていることが分かりました。私たちは相続放棄の手続きをしようと思っています。息子が私を受取人として入ってくれている生命保険もあきらめなければなりませんか。生命保険の受取人が相続人となっている場合はどうですか。
相続を放棄すると、放棄した人は最初から相続人ではなかったことになります。
被相続人が多額の借金を残していて遺産がプラス、マイナスでマイナスとなる場合、相続放棄して、借金の相続を防ぐことが考えられます。
この場合、生命保険がどう扱われるかが問題になることがあります。
しかし、生命保険金は、保険契約によって取得するものですから、相続放棄の手続きをしても、保険金を受けとる権利に何ら影響はありません。
受取人が相続人となっている場合、相続放棄により最初から相続人でなかったとされることとの関係で問題になりますが、判例は死亡時点における法定相続人に相続分の割合で保険金を受けとらせるとの意思があったと考えるべきだとして、たとえ相続放棄があっても保険金請求権には影響はないとしています。
あきらめる必要はありません。