マンション管理組合役員の責任 〜 会計担当者が横領した場合
2016年3月13日
マンション住まいをいたしますと、管理組合の役員が回ってまいります。組織活動や事務処理ができる方には白羽の矢が立ちます。本業が忙しくても、ボランティア精神で一肌脱がざるを得ないこともあるでしょう。やってみれば、役員さん達だけでなくご近所とのつき合いも広がり深まり、充実した任期を全うできたという方も多いと思います。
管理組合で扱うお金は、大きなマンションだと、修繕積立金等、大変な金額にのぼります。以下でご紹介する判例は、少し深刻なケースです。役員を後任に交代した後、会計担当役員が横領していたことが発覚しました。管理組合は、会計担当者を告訴するとともに損害賠償を請求しましたが、会計担当者は経済的に窮しており全額の弁償ができませんでした。すると、管理組合が、当時の役員らにも(理事長や副理事長、会計監査)管理責任違反を理由に損害賠償を請求して訴えを起こしたのです。
判決(東京地裁平成27年3月30日判決)は、副理事長には責任はなかったとしましたが、理事長と会計監査に対しては管理義務違反を理由に横領した会計担当役員と同額(残額)の賠償を命じました。会計担当役員は、理事長と会計監査にワープロで作成した偽造の残高証明書を示していましたが、その体裁から安易に信用したことに疑問を呈し、通帳確認を怠ったことに過失があったと判断しました。
ボランティア精神で引き受けた役員で、互いに仲良くやっていても、特にお金に関しては厳格なチェックが求められます。この判例は、役員を引き受ける方々に注意を喚起していると考えられます。
弁護士 井関佳法