医学部入試から女性差別を考える
東京医科大学は、2018年8月7日、入試において女子受験生を一律減点するなどの操作をしていたとして謝罪しました。結婚や出産で離職するケースが多く、短時間勤務になりがちな女性医師を増やしたくないのがその理由のようです。
その後、順天堂大学医学部などでも女性差別や浪人生差別の疑いが発覚しました。文科省の調査では、ほとんどの大学医学部で、女子受験生が男子受験生より合格率が相当低いことも明らかになりました。このような入試差別は、大きな社会問題となっています。
日本国憲法第14条は、法の下の平等を謳い、性別による差別を禁じています。憲法は国民と国との関係を規律する最高法規ですが、社会秩序の基準をも示しており、私人関係においても憲法の理念が実現されなければなりません。私立大学においても女性差別は許されないというべきです。
ところで、大学教授が行なったアンケート調査によれば、女子学生を含めた多くの学生が、「女性専用車両やレディスデーが男性に対する逆差別に当たる」と考えているとのことです。電車内での痴漢行為で傷付いた女性や賃金差別によってレストランでの食事の機会などが少ない女性がいる現実に眼が向けられていないようです。他方、大学進学における差別を尋ねても、大学生から特段の指摘はなかったとのことです。自己責任論にとらわれて、家庭の経済格差が大学進学率に影響していることに気付いていないのでしょうか。
憲法第14条は、形式的な平等ではなく実質的な平等の実現を目指しています。社会で起きている現象の表面だけにとらわれるのではなく、背後の事情にまで目を向けて個人の尊厳が実現される実質的な平等が実現される社会をつくっていきたいものです。