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情報技術の進歩と民主主義
〜広く物事を見つめる姿勢を忘れずに〜

2021年5月8日

 初めての緊急事態宣言から1年以上が経過しましたが、未だに新型コロナウイルスの話題が多く感じます。実際、多くの方が新型コロナウイルスに関するニュースに関心を寄せていますし、それも無理からぬところです。しかし、新型コロナウイルスだけが、世界のすべてではありません。
 例えば、東南アジアの国、ミャンマーで軍部がクーデターにより政権を掌握してから、2か月余りが経過しました。ついに民主的な政治を求める市民に対して発砲し、市民が射殺されるという事態にまで至りました。現在では、国内外のミャンマー国民が立ち上がり、インターネットを通じた情報の拡散やデモ活動により、国際社会の支援を求めています。一連の動きは、軍という実力組織に対する民主主義の脆弱性を示す一方で、情報技術の進歩による民主主義の可能性も示しています。いずれも民主主義の根幹にかかわる問題です。しかし、国内における関心はそれほど高まっているように感じません。これはやはり、新型コロナウイルスの流行によって、遠い国の状況に関心を払うことが難しくなっていることも原因の一つでしょう。今回のクーデターの背景には、新型コロナウイルスの影響で国際社会の関心が薄れたことも指摘されています。
 人間が一度に処理・記憶できる情報の量には限界があります。情報技術の進歩により、入手できる情報の速度と量は飛躍的に進歩しました。その速度と量に人間の能力が追い付いていませんし、今後追いつくこともないでしょう。最近では、無限に開かれたはずのインターネットの世界で、極めて限定的なコミュニティを形成し、自分にとって都合の良い情報だけを摂取する傾向があることが指摘されています。余暇時間まであえて不愉快な情報に触れたいと思う人は少ないでしょうし、興味のある事柄に限定して関心を向けることは至極当然のことでしょう。一方でそのような姿勢の先に、望まぬ結果を招くことは歴史に学ぶことができます。情報にあふれた今日であればこそ、開かれた視点で、広く物事を見つめる姿勢を忘れないようにしたいものです。

弁護士 石井達也

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