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裁判官の身分保障

2021年12月7日

 日本国憲法は、心身の故障のため職務不能と裁判された場合を除き、公の弾劾によらなければ裁判官を罷免できず、行政機関が裁判官を懲戒できないと定め(第78条)、国会に両議院議員で組織する弾劾裁判所を設けると定めています(第64条)。また、最高裁判所裁判官の国民審査の規定を置き、投票者の多数が罷免を可とするときに罷免されると定めています(第79条)。このように、裁判官の身分は憲法によって保障されています。
 2021年10月31日の衆議院議員選挙の際の国民審査では、11人の最高裁判所裁判官の国民審査が行われました。民法の夫婦同姓規定の合憲性が争われた訴訟で合憲、違憲の意見を述べた裁判官に対し、それぞれSNSで罷免運動が行われ、罷免を求める票は、合憲意見の4裁判官では7.27~7.85%、違憲意見の3裁判官では6.71~6.88%、訴訟終了後に任命された4裁判官では5.59~6.24%でした。ネット社会の進展の中で、SNSによる運動が国民審査でも影響力を持ちそうです。
 他方、裁判官訴追委員会は、2021年6月16日、仙台高等裁判所の岡口基一裁判官を訴追しました。これまで、8裁判官に対し、9件の訴追がなされ、1948年訴追の2件が不罷免、それ以降の7件は全て罷免と判断されています。
 訴追状では、岡口裁判官が行ったSNSへの殺人事件被害者遺族の感情を傷つける文書の投稿・掲載、民事訴訟の提起を不当評価する文書の投稿・掲載が、裁判官の威信を著しく失しなう非行に該当するとされています。弾劾裁判では、表現の自由や投稿文書の内容が罷免に相当する程度かが争点となりそうです。今後、すでに選任されている参議院議員及び2021年衆議院選挙後に選任された衆議院議員で構成される両院の訴追委員と裁判員のもとで審理が行われます。

弁護士 杉山潔志

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