相続放棄をした者は、相続財産について管理責任がないの?
相続財産には、現金や預貯金、債権、不動産などのプラスの財産だけでなく、債務などのマイナスの財産や価値のない不動産なども含まれます。
マイナスの財産が多い場合や相続問題に関わりたくない場合には、「相続放棄」という手続があります。相続人は、自分のために相続が開始したことを知ってから3か月以内に家庭裁判所に「相続放棄の申述」をすることができます。相続放棄をした者は、初めから相続人ではなかったとみなされます。
なお、相続人が相続財産の一部でも処分した場合などは、相続放棄ができなくなる場合があります。相続放棄をご検討される場合は、早期の法律相談をお勧めします。
民法は「相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。」としています(940条1項)。2023年4月1日の改正法施行により、相続放棄者の義務は、当該相続財産を「現に占有しているとき」と明確化され、また、従前の「管理継続義務」が「保存義務」となりました。
相続人全員が相続放棄をして相続人がいない場合は、相続財産の清算人などの選任をしない限り、相続放棄をしても、保存義務は続くことになります。
相続放棄者の保存義務は、次の順位の相続人などに対して負う義務であり、第三者に対する義務ではないとされています。しかし、「現に占有する」相続財産が家などの土地の工作物の場合は、工作物責任を負う場合があります(民法717条)。詳しくは、法律相談をお勧めします。