離婚後の「共同親権」導入
2024年10月4日
◆離婚後の「共同親権」導入などの民法改正の成立
離婚後に父母双方が子の親権を持つ「共同親権」の導入などを内容とする民法改正が2024年5月17日に成立し、同月24日、公布されました。改正法の施行は公布から2年以内とされています。
改正民法の内容
改正された主な点は次のとおりです。
- 父母の子に対する責務が規定され、親権が子の利益のために行使されなければならいことが明確化されました。
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離婚後の親権者に対する規定が見直され、協議離婚の際に、父母の双方か一方を子の親権者として届出ることになりました。協議が整わない場合、裁判所が子の利益を考慮して父母双方または一方を親権者と指定します。子への虐待のおそれなど共同親権とすると子の利益を害する場合には単独親権とするとされます。
婚姻中を含め、父母双方が親権者のときは親権の共同行使が原則ですが、虐待からの避難や緊急の医療、日常の子の身の回りの世話など単独での親権行使が可能な場合が明確化されました。 - 養育費債権に対する先取特権の付与、法定養育費制度など養育費の履行確保に向けた制度が置かれました。
- 審判・調停等の親子交流の試行的実施に関する規定が整備されました。
◆「共同親権」導入に関する課題
離婚後の共同親権については、離婚後も子の養育に関われると歓迎する意見もありますが、子の進学や転居の場合などに他方の親権者との協議を要するため、元配偶者との関係が断てず、同意しない場合には先へ進めないと反対する意見もあります。
また、裁判所が“子の利益”を判断できるのか、現在の家庭裁判所の体制で可能なのかなどの疑問も出されています。
制度が実施された後も、山積する課題の解決が必要です。
弁護士 杉山潔志