子ども性暴力防止法(日本版DBS法)と「包括的性教育」
性被害は、子ども・大人を問わず、被害者の心身に生涯にわたり回復し難い重大な影響を生じさせるものであり、「魂の殺人」とも言われます。
特に子どもは、性的知識の未熟さや立場の弱さがあり、一層被害申告をしにくい状況であり、周りも被害に気づきにくく、深刻な状況が継続・拡大する場合があります。
2024年6月に成立した同法は、子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴がないかの確認を事業者に義務付ける法であり、2026年12月までに施行されます。
学校、認可保育所、児童館などの事業者は、対応を義務付けられます。学習塾、スポーツクラブ、認可外保育所などは、申請して認定を受けると対象事業者となります。
照会対象となるのは、性犯罪の有罪判決(罰金含む)の情報であり、痴漢・盗撮などの条例違反も含まれます。示談等により不起訴となった事件は対象外です。
就職希望者だけではなく現職員も対象となり、配置転換や解雇問題等が生じます。
日本版DBS法は、再犯を防ぐシステムであり、「初犯」を防ぐものではありません。
教育・保育等の現場では、支配的優越的な立場、継続的密接な関係性、第三者の目に触れにくいという特徴から、長期間にわたり多数の被害者を出して発覚する「初犯」のケースが少なくないのです。
子どもの性被害を予防し、早期に申告・発見し、また、性加害をさせないためには、子ども時代から大人まで、性と生殖に関する健康・権利を学び、ジェンダーの視点を持った「包括的性教育」を拡げる必要があると思います。
※DBS= Disclosure and Barring Service(犯罪証明管理および発行システム) の略