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弁護士の “やましろ”探訪 〜古から現代へ〜

日出神社の神石

杉山 潔志
日出神社(精華町柘榴向井) ▲日出神社(精華町柘榴向井)
〔精華町柘榴(ざくろ)にある日出神社の神石〕
 奈良県生駒市高山に発し京都府相楽郡精華町南部を流れる木津川に注ぐ山田川右岸の柘榴向井に、光明皇后を祭神とする日出神社があります。本殿の横には鹿の足跡のある神石が祭られています。由緒によると、日出神社は、もともと大和国生駒郡高山村鹿ノ畑に鎮座していましたが、延暦年間(782年〜806年)のころ、暴風・大雨で山田川に大洪水が発生し、大きな石が川辺の松の老木に流れ着いて神石として祭られ、「柘榴」の地名は、流れ来た大石が木で留まったので「石留」のそれぞれの字に木偏をあてたことに由来するとのことです。
 旱魃のとき、神石を藤つるで縛って運び山田川に入れると雨が降るという雨乞い伝説が残されており、神石は雨乞い石とも呼ばれています。雨乞い石由来碑には、山田川沿いに朝日庄という荘園が成立拡大していった歴史的事実があり、そこに「日出」とその「光明」すなわち「朝日」という関連が窺え、「日出神社」並びに「雨乞い石」が朝日庄という荘園の歴史と深い関係を持つことを推測させると記述されています。
 山田川を上流に進み、京都・奈良の府県境に架けられた両国橋を渡った北西側に生駒市・鹿ノ台団地があり、団地丘陵の西端に龍王社という祠があります。ここにも鹿の足跡のある大きな石が祀られています。日出神社の神石は、この辺りから流れてきたものでしょうか。
日出神社の本殿と神石(雨乞い石) ▲日出神社の本殿と神石(雨乞い石)
〔気象の制御〕
 雨乞いを願う民衆の願いが神石伝説となったようですが、気象を制御し、必要なときに雨を降らせ、自然災害を防止することは、人間の永年の夢です。大戦後、過冷却の大気にドライアイスやヨウ化銀を散布するという人工降雨の実験が行われてきました。アメリカでは1990年代に発達しつつあるハリケーンにヨウ化銀を散布して勢力を削ぐ実験が行われたことがあります。しかし、これらの実験の効果は判然としたものではないようです。
 韓国政府は、2019年3月、大気汚染の解決に向けて中国と共同で人工降雨技術の交流や人工降雨実験を行う計画を発表しました。実験の効果が注目されます。
生駒市・鹿の台団地の西にある龍王社 ▲生駒市・鹿の台団地の西にある龍王社
〔豪雨と台風に見舞われた2018年〕
 2018年は、豪雨と台風に見舞われ、日本各地で大きな被害が発生しました。  平成30年7月豪雨では計11府県で大雨特別警報が出され、西日本各地で72時間雨量が観測史上最大となり、河川の氾濫、洪水、土砂災害が発生して死者224名、行方不明者8名、負傷者459名、住家の全壊6758棟、半壊1万0878棟、一部破損3917棟、床上浸水8567棟、床下浸水2万1913棟などの被害が発生しました(2018年11月6日消防庁被害集計)。
 9月4日に徳島県に上陸した台風21号は、近畿の33地点など全国927の観測地点のうち100地点で観測史上最高の最大瞬間風速を観測して猛威を振るい、死者13人、負傷者912人、住家の全壊9棟、半壊46棟、一部破損2万1920棟などの被害を与えました(2018年9月14日同集計)。
 9月30日に和歌山県に上陸した台風24号も、全国55地点で観測史上最大の最大瞬間風速を観測し、大きな被害を発生させました(2019年2月12日同集計)。
鹿の台団地の西にある龍王社の祠と石 ▲鹿の台団地の西にある龍王社の祠と石
〔災害に強い地域社会と復興支援の必要性〕
 地球温暖化の影響からか、猛暑日の連続、異常な豪雨、台風の大型化など異常な気象現象が増加しているようです。しかし、気象現象の制御はできそうになく、備えるしか方法がなさそうです。2018年の豪雨・台風災害は、「災害列島」の日本で、国や地方自治体が災害に対する法律や制度を整備し、人的・財政的な力を投入して、人命や生活基盤を守るとともに、被災者の復興を支援する体制を整備・強化する必要性を感じさせました。
  • 国道163号線・柘榴交差点 ▲国道163号線・柘榴交差点
  • 七条橋から見た山田川上流と柘榴集落 ▲七条橋から見た山田川上流と柘榴集落
  • 国道163号線の京都・奈良の境に架かる両国橋 ▲国道163号線の京都・奈良の境に架かる両国橋
2019年5月

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