京都南法律事務所

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弁護士の “やましろ”探訪 〜古から現代へ〜

黒田節発祥の地

杉山 潔志
伏見桃山城・模擬天守 ▲伏見桃山城・模擬天守
〔新型コロナウイルス感染拡大と飲酒〕
 新型コロナウイルスが日本に侵入して3年が経過し、全国で感染者数は約3160万人、死亡者は6万3000人に達しました(2023年1月17日現在)。
 政府は、2021年11月、感染拡大を防止しながら日常生活や経済社会活動を継続させるために行動制限緩和を打ち出し、基準を満たす感染防止対策をしている飲食店の認証制度を発足させ、まん延防止等重点措置地域や緊急事態措置区域以外の区域における認証店の営業時間短縮要請や酒類提供の規制をなくしました。
 京都府で実施されていたまん延防止等重点措置は、2022年3月21日をもって終了し、第8次といわれる感染拡大が進む中でも忘年会や新年会が復活し、飲食店での飲酒の機会も増えてきたようです。
黒田長政下屋敷跡参考地の石柱と説明板 ▲黒田長政下屋敷跡参考地の石柱と説明板
〔黒田節が誕生した伏見〕
 飲酒で想起されるのが

 酒は飲め飲め飲むならば
 日の本一のこの槍を
 飲みとるほどに飲むならば
 これぞまことの黒田武士

と唄われる福岡民謡の黒田節です。黒田節の歌詞は儒学者・貝原益軒が編纂した「黒田家臣伝」に記述された次のような逸話にちなんでいるといわれています。
 文禄5年(1596年)正月、黒田八虎(くろだはっこ)の一人で酒豪の母里太兵衛友信は、伏見城下の福島正則(左衛門大夫)の屋敷で行われていた酒宴の際に、酒に酔った大酒飲みの正則から酒を勧められ、固辞していたところ、「黒田武士は酒に弱い」などと挑発された上、「この大盃にて酒を飲めば望みのものを取らせる」と言われたので、座上に掛けられた大身鑓を所望し、大盃になみなみと注がれた酒を飲み干して、「日本号」と呼ばれる名槍をもらい受けました。
桃山福島太夫南町の敷地段差 ▲桃山福島太夫南町の敷地段差
 黒田長政の屋敷は現在の伏見区深草大亀谷敦賀町付近にあったと推定され、正則の屋敷は現在の伏見区桃山福島太夫北町・同南町・同西町辺りにあったといわれ、福島太夫という町名として残っています。この地にある段差は武家屋敷の区画のなごりといわれ、福島太夫段差と呼ばれています。
 友信がもらい受けた「日本号」は室町時代後期に作られて皇室に献上された槍で、正親町天皇から室町幕府15代将軍足利義昭に下賜され、織田信長、豊臣秀吉へと渡って、秀吉から正則に与えられた天下三名槍と呼ばれた槍の1つです。「日本号」は、穂(刃長)79.2cm、全長321.5cm、総重量2.8kgの大身鑓で、「呑み取りの槍」とも称され、現在、福岡市博物館に収蔵・展示されています。
 飲酒酩酊の副作用、恐るべし — 酒は飲むべし、飲まれるべからず。
桃山福島太夫南町のる京都市広報版 ▲桃山福島太夫南町のる京都市広報版
〔飲酒についての規制〕
 日本は、戸外での飲酒や公衆面前での泥酔が規制されていません。また、酒類販売などに対する規制も緩い国でしたが、2001年1月、新自由主義政策にもとづいて、さらに酒類販売の規制緩和が進められました。
 他方、2022年4月に施行された民法改正によって成人年齢が18歳になりましたが、「未成年者飲酒禁止法」は「20歳未満者飲酒禁止法」と名称を変え、20歳未満の者の飲酒禁止、未成年者の法定代理人等に対する飲酒制止義務、酒類販売・提供を行う営業者の20歳未満の者に対する酒類の販売・提供などの禁止という規制と処罰が引き続き維持されました。
 飲酒以外にも、喫煙年齢や競馬の勝馬投票券、競輪の勝者投票券、競艇の勝舟投票券などの購入年齢も、成人年齢引き下げ後も20歳未満の者に対する規制が維持されていますので、注意を要します。
 なお、京都府下の自治体は、2023年1月の成人の日を「はたちを祝う記念式典」などとして執り行いました。

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  • 御香宮正門西側の石積み ▲御香宮正門西側の石積み
  • 御香宮南側石積み前の「黒田節」誕生の地説明板 ▲御香宮南側石積み前の「黒田節」誕生の地説明板
  • 墨染通八科峠付近(伏見区深草大亀谷敦賀町) ▲墨染通八科峠付近(伏見区深草大亀谷敦賀町)
2023年1月

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