京都南法律事務所

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債権と契約

3 契約書は何のために必要なの?

口約束でも契約が成立するなら、契約書はなぜ必要なのでしょうか
「1 債権って、契約ってなに?」で書いたように、契約が有効に成立するためには「申込」と「承諾」が必要です。そして、「申込」と「承諾」の内容によって、その契約から発生する「債権」「債務」の内容が決まります。従って、契約をした後になって、「そんな約束は覚えがない」「確かに約束はしたがそんな内容ではなかった」と相手が言ってきた場合には、あなたは「申込と承諾が存在したこと」や「申込と承諾の内容」を証明しなければなりません。
そんな時に、元々の「申込」と「承諾」を口頭でしていたらどうなるでしょうか。あなたは相手に向かって「約束はあった」、相手はあなたに向かって「約束はなかった」と言い張ることになりますが、その決着を法的につけるのが裁判です。裁判では、原則として「ある事柄について『あった』と主張する側が、その事柄があったことを証明しなければならない」ということになっている(『あった』と主張する側が「挙証責任」を負っている)ので、ある事柄があったかなかったかが分からない場合には、原則としてその事柄は「なかった」ことになります。
従って、申込と承諾があったということが証明できないと、裁判では契約はなかったことになり、「約束があった」と言いたいあなたは、困ってしまいます。
そこで、契約書の登場です
契約書は、契約をする当事者同士がその中身を確認・理解した上で、「この内容通りの契約をする」という意思のもとに作るものですから、契約書があれば「申込と承諾があったこと」はもちろんのこと、「申込と承諾の内容」も明らかになります。逆に言うと、契約書は、お互いがその内容を確認・理解した上で作成することが重要です。
このように、契約書が存在すれば、契約の存在や内容について裁判になったときに、勝つことができますし、さらには、そもそも契約の存在や内容が客観的に明らかなので争いになりにくい、争いごとに巻き込まれにくい、といえます。ただし、契約書に定めるべき事項は、3の表に書いたものだけでなく多岐にわたりますから、無駄な争いに巻き込まれないためには、あらかじめ弁護士に相談してから契約をされるのがよいでしょう。

ところで、工事の請負などの場合には、最初は契約書を作っても、途中で追加工事や変更が入った場合には、いちいち契約書の作成をしないということがあります。このような場合でも、たとえば、見積書に施主のサインをもらっておけば、「見積書の内容通りの工事を追加する」という合意の存在を証明する有力な証拠となります。
きちんとした契約書がない場合でも、合意があったことと合意の内容が証明できればいいわけです。従って、どのような契約であっても、少なくとも契約が紛争なく終了するまでは、契約に関連する資料(メモ、手紙、写真、領収書、レシート)等を保管しておくことが重要です。契約書を紛失する可能性もありますから、契約書がある場合でもこれらの資料は保管する方がよいでしょう。
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