京都南法律事務所

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債権と契約

6 民法(債権関係)の改正紹介

1898年に施行された民法の債権部分に関して2017年に大幅改正された法律が2020年4月1日から施行されました。主な改正点は次の4点です。
    保証人に関する規制
  • 保証契約とは
  • 根保証には限度額の定めが必要
  • 対象となる保証契約
  • その他、公証人の関与・情報提供義務
    その他の改正・改正全体についての参考HP
  • これまで紹介したもののほかにも、債権譲渡、危険負担などいくつかの項目について改正されていますので、気になることがありましたら、ご相談ください。
  • ●民法の一部を改正する法律(債権法改正)について(法務省)
    http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_001070000.html
  • ●重要な実質改正事項 図表で解説されており、わかりやすいです。
    http://www.moj.go.jp/content/001259610.pdf

保証人に関する規制

保証契約とは
「保証契約」とは,本人(主債務者)が支払わない場合に代わって支払う義務を負う契約です(以下の説明は「連帯保証」の場合も当てはまります)。「迷惑をかけない」「名前だけ」などと言われて保証人を引き受け、大変なことになってしまうことがあります。
保証契約はどれもリスキーですが、中でも保証契約時点では主債務の金額が決まっていない「根保証」は、予想外の負担を背負い込まされ特別危険です。
根保証には限度額の定めが必要
現在は、根保証のうち、個人がする、主債務に貸金が含まれている「貸金等根保証」に限り、保証人の負担の限度(極度額)の定めが必要で(定めがなければ保証契約は無効となります)、保証期間(確定日)は原則3年最長5年、特別事情(破産や死亡・元本確定事由)によって保証が終了するとされています。
今回の改正で、個人のする根保証一般について、限度額の定めが必要で(定めがなければ保証契約は無効となります)、特別事情(破産や死亡・元本確定事由)によって保証が終了するとされ、根保証の規制が広げられました。
これによって、賃貸契約や介護・医療施設の入居契約の保証人、会社の取引先との債務一般を社長が保証する場合等がカバーされることになりました。
対象となる保証契約
改正法は、施行日(4月1日)以降の保証契約に適用されます。この点法務省が、施行日前からの賃貸契約が施行日後に更新される場合、保証人が更新契約書に署名すると改正法が適用され限度額の定めが必要となり、署名しない場合は、当初契約の効力が存続するとされているため、更新後も保証人の責任が続くとの見解を示していることに注意が必要です。
その他、公証人の関与・情報提供義務
その他、会社や事業用融資について、事業に関与していない親戚や友人が保証人になる場合は、公証人に保証意思を確認してもらうことが必要とされました。
また、事業のための債務を個人に保証してもらう場合、主たる債務者は保証人に対して財産・収支の状況、負担している全債務の総額や履行状況等を知らせなければならず(情報提供義務)、知らされていなかった保証人は、保証契約を取り消せる場合があるとされました。

債権の消滅時効の変更

消滅時効とは
消滅時効とは、お金を請求したりや物を引き渡してもらうといった債権を持っている人が一定期間権利を行使しなかった場合に、その債権が消滅する制度のことです(なお物権と呼ばれる権利についても消滅時効がありますが本稿では触れません)。「本当は支払いをしたけれど、ずいぶん前のことで領収証がどこにいったかわからず支払ったことが証明できない!」といった不都合が起こることを避けるために設けられた制度です。
5年間に統一
これまでは、原則10年間債権を行使しなければ債権が消滅するとされていましたし、飲食代金などについては期間を1年とするなど、例外的に10年よりも短い時効期間が定められている債権もありました。
2020年4月1日からは、このルールが変更され、どのような債権でも権利を行使しないまま5年(権利者が権利が行使できることを知らなかった場合には、権利を行使できるときから10年)を過ぎると消滅することになりました。原則は短くなったのですが、一方で「飲み屋のツケは1年で消えてなくなる。」などと言われていたのがこれからは5年経たないと消滅しないことになりました。
人身事故の賠償請求も5年
不法行為の時効が、損害および加害者を知った時から3年、不法行為時から20年という規定は、変わっていません。しかし、人の生命または身体の侵害による損害賠償請求については、3年が5年に延長されました。
なお、4月1日以前に発生した交通事故であっても、4月1日時点で、まだ3年が経過していない場合は、新法が適用となり5年になります。
賃金債権は、当面3年
これまで賃金債権の時効は2年でした。4月1日以降は、ほかの債権と同じように5年ではなく、当面の処置として3年になります。起算日は、労働契約成立時ではなく、各賃金が発生した日です。
よって、4月1日までに発生した賃金についての時効は2年、それ以降の分は3年となります。

定型約款の効力

身の回りの定型約款
「火災保険に入る時、細かく色々なことが書かれたい書類(約款)を渡されます。インターネットで買い物をする時も、その事業者の利用規約に同意しないと手続きが出来ないようになっている例が多くあります。JRに乗る時も、運送約款が適用されることになっています。
利用者はそれらの約款を読んだ上で契約をすることは、そのほとんどの場合ありません。しかし、問題が生じた場合、「約款」が根拠となり、事業者に有利なように解釈されるということが通常でした(もちろん、裁判で争って、その規定の適用は出来ないという判例も出されていますが)。
規定の新設
定型取引を行うことの合意をした者は、①定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき、ないし、②定型約款を準備した者があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を表示したときは、定型約款の個別の条項についても合意したものとみなす」との規定(民法548条の2)を新たに設けました。
しかし、その場合でも、細かく書かれたすべての条項が適用となるのではなく、「①相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、②その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして信義則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるもの」については、「合意しなかったものとみなす」としています。
わかりにくいと思いますが、そのような規定です。
約款内容の開示
取引の前、又は取引後の相当期間内に、事業者に対して利用者が定型約款を開示するよう請求した場合は、事業者は開示することが義務づけられました。開示しないときは、定型約款による合意はなかったことになります。

法定利率は3%

一律3%に
これまでの民事法定利率は5%、商事法定利率は6%です。これは、制定当時の取引における金利を基準にしたものです。昨今の金利は、1%にも満たない状況で実情に合っていません。
今回の改正により、商事法定利率は廃止となり、一律に、3%となります。また、改正後3年ごとに法定利率の見直しが行われることになりました。
なお、2020年4月1日前に利息が発生している債権、並びに、遅延損害金が発生している債権(例えば、交通事故などの損害賠償請求権)については、旧法が適用されます。1つの債権は、同じ利率が適用されるわけです。
中間利息の控除
交通事故の逸失利益(将来の得られたであろう収入分)については、将来分をまとめて先に受け取ることになるので、中間利息が控除されています。その利率も、3%に変更となります。なお、事故時が、改正前の場合は、5%となります。
例えば、27歳で交通事故で死亡した場合で見ますと、これまでは、40年分(67歳まで働いたとして)は、約17.1×年収でしたが、3%で算定すると約23.1×年収となるますので、かなりの増額となります
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