2 離婚の方式
協議離婚
夫婦が離婚を合意し、双方署名押印の上、役所に協議離婚届を提出すれば、離婚が成立します。離婚時には、未成年の子どもの親権者を必ず決める必要がありますので、協議離婚届に父母どちらが親権者となるかの記載が必要です。離婚原因の記載はなく、養育費の取り決めも要件ではありません。養育費や財産分与などの取り決めをする場合は、履行確保のために公正証書などで契約書を作成した方がよいでしょう。養育費や財産分与について合意できなければ、協議離婚後でも、その調停を申し立てることは可能です。
調停離婚
夫婦で離婚の合意ができない場合、いきなり離婚裁判はできません。まず、相手方の住所地、あるいは合意した家庭裁判所に調停を申し立てます(調停前置主義)。調停では、当事者が交替で調停室にはいり、調停委員に事実経過や自分の要求を話します。待合室も別々です。調停の場合は、養育費や、財産分与、慰謝料、子どもとの面接交渉などについても話し合い、合意すればすべて調書に入れることができます。
調停調書は、判決と同じ効力がありますので、相手方が金銭の支払い約束を履行しない場合は、給与差押えなどの強制執行が可能です。
家庭裁判所から履行を勧告してもらうこともできます。調停は、平日の午前10時から午後5時の間の時間帯、通常は約1ヶ月に1回のペースで行われます。
裁判離婚
調停が不成立になった場合には、夫婦どちらかの住所地の家庭裁判所に訴えを提起することができます。裁判離婚の場合は、民法が定める離婚原因が必要とされます(民法770条)。裁判も調停と同じ時間帯で行います。裁判所に提出する書面作成、本人尋問などの証拠調べもありますので、この段階になると、弁護士を訴訟代理人に選任する人が多いです。その場合、通常の裁判期日は、弁護士だけが出頭して手続きをすすめることができます。
裁判所の判決ではなく、和解で離婚する場合もあります。
- ●夫が家出し、消費者金融からの多額の借金が判明したケース
- このケースでは、妻は「夫が3年以上生死不明でないと離婚できない」と思い込んでいました。しかし、第2号「悪意の遺棄」及び第5号に当たるので、裁判離婚をすることは可能です。
- ●行方不明者相手の裁判
- 裁判をするためには、相手方に書類を送達する必要があります。
しかし、行方不明の場合には、現実に訴状などを届けることが不可能です。この場合、「公示送達」という手続きにより、裁判をすすめることができます。従って、家出して行方不明となった配偶者に対して離婚裁判をすることは可能です。 - ●不貞行為などの有責性がある配偶者からの離婚請求は認められるのか
- 昔の裁判所は「認めない」という立場でしたが、1987年に「夫婦が相当期間別居し、その間に未成熟子がいない場合には、離婚により相手方がきわめて苛酷な状態におかれる等著しく社会正義に反するといえるような特段の事情のない限り、有責配偶者からの請求であるとの一事をもってその請求が許されないとすることはできない」との最高裁判決が出て判例が変更されました。これは別居期間も長く、他に家庭を築き、相当な資産の財産分与等をして生活保障をしているケースでした。また、1994年には「未成熟子がいる場合でも、ただその一事をもって排斥すべきではない」との最高裁判決が出ています。ケースバイケースなので、よく弁護士とご相談ください。
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4 | 別居中の生活費の請求 |
5 | 離婚の際に決めること |